第14話・Let enjoy summer season

 梅雨が明け、湿気を多く含んだ空気が漂い、肌を焼き焦がすような日差しが降り注ぐ7月中旬……遂に、G市に暑い夏が来た。


・颯斗は語る

 終業式が終わり、家に帰ったら夏休みがスタートするというわけだが、今日からしばらくの間は夏休みの課題を終わらせなければならない。

ちなみに課題はこんな感じだ。

・漢字のテキスト

・数学のテキスト

・読書感想文または自由研究

とまあ、アーカム高校の夏休みの課題はこんなものである。

 俺の予定としては漢字のテキストから終わらせて最後に読書感想文を終わらせる予定だ。


 学校の帰り道、颯斗は嵐斗と一緒に家路に着いていた。

「今日は部活の招集とか無かったのか?」

サバゲー部に所属している嵐斗が自分と一緒に帰れたことに疑問を持っていた颯斗はそう尋ねると、嵐斗は「今日は皆揃って装備の点検をしなきゃいけないからそう言うのは昨日の時点で終わってる」と答えた。

 道中のコンビニで昼食を買いながら今日の予定を話し合う。

颯斗「とりあえず俺は課題を少しでも速く片付ける」

嵐斗「俺は仕事が来なければそうする」

兄弟考えることは同じだったらしい……コンビニを出てすぐの事、嵐斗はガリ〇リ君 ソーダ味を齧りながらこう言った。

「まあ、今年ぐらいは夏休み早々に仕事が来るわけがな……」

そう言いかけたその時、嵐斗のスマホに着信が入る。

 嵐斗は「兄さんゴメン、ちょっとこれ持ってて」と言って右手のガリ〇リ君を颯斗に手渡し、着信に出た。

「はいもしもし……はい……お耳が早いようで……来週ですか……いえ、その日の夜は空いてはいますが……」

嵐斗は急に怪訝な顔になって電話の相手にこう言った。

「どうしてそんな企画を受けたんですか?」

 相手の言い分を聞いてから、嵐斗は呆れたようにこんなことを言いだした。

「少し時間を貰えますか? そんな場所に行くんだったら俺じゃことが足りません。知り合いにそう言った専門家がいるので本人の応援が取れ次第連絡します」

相手も納得したらしく「それでは」と言って通話を切った。

 颯斗はガリ〇リ君を返しながら「また仕事か?」と尋ねると嵐斗は呆れたように詳細を話した。

「また、芽理沙さんから……動画サイト用にこの街にある心霊スポットに行くから護衛兼出演をして欲しいってさ」

 颯斗は芽理沙と聞いて「誰?」と尋ねると嵐斗は「え?」と少し驚いてこう言った。

「デビューから1年足らずでCD売り上げ100万突破してる超人気の歌い手で兄さんの中学の時のクラスメイトだろうが!」

嵐斗にそう言われた颯斗は「マジで!?」と驚きの声を上げた。

「というか兄さん、よく教室で芽理沙さんと話してたよね?」

驚いている颯斗に嵐斗はそう尋ねるも当の本人には全く記憶になかった。


・颯斗は語る

 あれ? ちょっと待って! 俺の知り合いにそんなアイドルいたっけ? 全く記憶にないぞ!

メリサ? メリサ……名字は何だ? 俺が中学の時の交友関係ってどんなんだったけ? 当時仲が良かったクラスメイトって言うと……記憶にないというよりはそんなもの自体が無いと言わざるを得ないな。

時間があったら卒業アルバムを見てみるか……


 ここでふと、颯斗はなぜそんな有名人と繋がりがあるのか気になった。

「思えばその人って中宮レコーディング所属なのか?」

嵐斗は「そうだよ」と答えて詳しいことを話した。

「中学の時に俺が神無月プロダクションからスカウトを受けていたことを噂で聞いたらしくてまだコネがないかって聞いてきたのが始まりだった」

 しかし、所属が違うことに疑問が湧く。

「でも所属は中宮レコーディングなんだよな? 嵐斗は中宮レコーディングからもスカウトを受けていたのか?」

颯斗はそう尋ねると、嵐斗は「いや、中宮レコーディングとは別の経緯で知り合った」と答え、話を戻す。

「神無月プロダクションとは縁を切っていた俺は、中宮レコーディングの社長に芽理沙さんを紹介した……結果的に、芽理沙さんは透き通った美声で沢山の人気を呼んで、最近になって東北地方のライブツアーを終えたばかりだ」

 なぜスーパースターが所属している事務所の社長と知り合いなんだ?

颯斗は自分の右隣を歩いている弟が何者なのかと疑問に思った。

 家の玄関の前で颯斗は嵐斗にこんなことを聞いた。

「なあ嵐斗、俺の弟であるお前って何者なんだ?」

嵐斗はその質問にフッと鼻で笑って答えた。

「俺はただの探偵の助手をやってるバンピーの高校生だよ」

などとアイスの棒を加えながら「自称・一般人」を名乗った。

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