第98話 リセット

 バイトから帰ると、眠気に襲われる、よくあることだ。

 普段はソファで眠ってしまうのだが、この日はフラフラとベッドに横たわった。


 飼い猫が擦り寄って来る。

 時間は18時前、意識が途切れたように…気づけば23時であった。

 いつもなら眠りは浅く、1~2時間ごとに目が覚める。

 5時間も眠るなど滅多にない。

 起き上がる気もなく、その後も3時間ほど眠り目が覚めるを繰り返し気づけば翌日の9時、バイトに行く時間になっていた。


 15時間、トイレにも行かずに眠った。


 頭は重く、身体が痛い。

 バイトでも、思うように身体が動かない。


 というか夢を見ているようなフワフワとした感覚が続いた。

 思い返せば、故人の夢ばかり視ていたような気がする。

 祖母…会社の上司…取引先の営業…色んな夢を視た。


「いつ休んだっけ…」


 ずっと働いていた。

 本業もバイトも休みを取れないまま働き続けていた。

「死にたい」

 時々、襲ってくる「死にたい」願望を何週間も抱いたまま…。


 死には匂いがあるという。

 今の僕は死の匂いを纏っているのだろうか?


 15時間の睡眠は、たぶんリセット時間だったように思える。

 猫を抱いて…少しだけ泣いた。

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