第95話 1265円

 レンタカーの延長料金だそうだ。

 この料金を払いたくないだけで人を跳ねて事故車を返却して、帰宅した男がいる。


 跳ねられた人の命の価値は、この男にとって1265円だったのだ。


 自首することもなく、レンタカーの会社に連絡もせず、彼が順守したのは納期だけ。

 自宅に警官が来て逮捕となったのだそうだ。

 人を跳ねたことを認めている…この報道の怖いところはココだ。


 人を跳ねた認識があって、借りた車を事故車にして返却して、罪の意識が無いというところだ。


 こういう人間が、昨日まで社会に60年以上、存在していたのだ。


 逮捕した事実が、どうのこうのではない。

 こういう人間が野放しになっている事実が怖い、そして、また社会に戻されるという司法が怖いのだ。


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