第33話 ついに来た

「桜雪さん、8階の特別室、今日は清掃だって」

 ついに来た。

 年末から連泊している客。

 3日に一度くらい清掃を頼んでくるのだが…

 包丁からガスコンロ、調味料、食材を持ち込んでいると聞いていた。

「ホテル的にOKなの?」

 それはホテルが決めることなので、知ったことではない。

 どんな底辺も受け入れるのだろう。

 そういう変わった部屋は興味がある。

「ついに来たか…いいでしょう…興味はあったんで」

「汚いわよ~」

「10日以上泊まってるから仕方ないですね」


 いざ入室…

 汚く…臭い…

 想像以上の充実した調味料、卓上ガスコンロ、なべ…フライパン?

 料理してるね…これ。

「だが…専門的ではない…家庭的なレベルだ」

 脱ぎっぱなしの靴下、ジーンズ

「うん…底辺臭がするね…」


「コンシーラー…ディーオルだ…化粧品は高いの使うんだ…」

 イヤリング…安物だ…

 ゴミ以外は触らないが鉄則である。

 テーブルもゴミを避けて拭くだけ、ゴミ箱だけ入れ替える。

 掃除機も避けて掛けるから、楽と言えば楽なのだ。


「う~ん…面白みがない…」

 しかし…防火管理的に大丈夫なの?


 このホテルは…許容範囲が広くて嫌だ。

「どうだった? 桜雪さん」

「いや…汚い以前に…逃亡犯の感じがするよ…僕は」

 カメラのあるコンビニとかにはいけない。

 人目につくから外食もしない。

 小さなスーパーで食材だけ買って、ホテルを転々としている…そんな感じがする。

「犯罪者だったら面白いんだけどな~」

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