衣替え

幾分日が落ちるのが早くなった

蝉時雨は避けられぬ死への恐怖

断末魔にしか聞こえない

足元には

蝉の、何か

魂の抜けた、何か

が、

ころがっている

興味と、過激なわたしが

足を伸ばして

カサカサ、パリパリ

もうこれは何なのだろうか


少し肌寒くなって

何となく夜は半袖が寒い

羽織もの、持ってくれば良かったなぁ


夏に会った太陽

自信家で、眩しくて

何もかもがうまくいってそうで

楽しいしか言わない

あいつは

引き出しを乱暴に開けて

私の引き出しを

乱暴に。

穴だらけの服

もう着られない小さな服

背伸びして買った、派手な服

まだ自分がかわいいと思っていた時の、服

乱暴に、乱雑に引っ張り出される

無様な、それら


見たくない、でも

誰も戻してくれない


一人泣きながら

一枚一枚

たたんで

引き出しにしまう

ぐしゃぐしゃのまましまうと

引き出しに収まらなくて

溢れ出てしまって

だから、初めから綺麗に畳む


夏は嫌いだ

私の誕生日、嫌いだ

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