ぴーちゃんの仮装
ぴーちゃんすげえ……。
俺は得意気に胸を張るぴーちゃんを呆然と見つめた。ヤバい。本格的すぎる。
「融、こんなもん何処で買ったんだ……」
ハロウィンパーティーの当日、俺の部屋に集まった面々は思い思いの仮装をしていた。俺や融はまあ、某夢の国で昔買った超有名なネズミやアヒルのぬいぐるみ帽子を被っているだけなんだが。だって、仮装とか面倒くさいし。
俺も融も気合いを入れたのはおっさんたちの仮装だ。そりゃ当然だろう。
ぴーちゃんはマジもんだった。それはもう、ファンタジーの世界から抜け出してきたような。歴戦の勇士……とはちょっと違うか。
着倒して肌に馴染んだズボンの裾をショートブーツに突っ込んで、ほぼ裸の上半身には革鎧。背を被うマントは擦り切れて、所々裂かれた箇所もある。全体的に暗い色合いで渋い。そして手には厳つい武器を握っていた。
なにあれ金棒? 重たそうな鉄の塊にはご丁寧に恐ろし気に光る刃がぐるぐると巻き付けてある。それは何なの? 殴るためのものなの? 斬るためのものなの? 怖ええよ。
そして、いつもの鬼瓦。
悪役感半端無い。
「一応色々ネットで調べたんだけどさあ」
そして一応取り寄せてみたんだけど。
へらへらと融が笑う。
「それ見たぴーちゃん、たった一言『ダサい』って」
そう言って融が見せてくれたのは悪くはないものだった。華美ではないが恰好のいい戦士の衣装。でも目の前のぴーちゃんを見た後では作り物感が否めない。
「それで、あんなの何処で調達したんだよ」
目を眇める俺に融はさらりと言った。
「ああ。持ってるって」
「は?」
「似たようなの持ってるから着て来るって、ぴーちゃんが」
僕も今日初めて見たんだよねー。ぴーちゃんヤバいな。恰好いい。
通常運行で写メりまくる融と、今やすっかり板についたポージングで写真に収まるぴーちゃん。軽々と持ち上げた金棒が重い音を立てて空気を切り裂く。
その金棒もやっぱり自前なのか?
ぴーちゃん何者なんだ……。
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