第33話 賢者のゆく道へ ②

「我が名はアミナス! あんたが賢者ならば、我にその力を示せ! その力を認めたのち、力を貸すとしよう!」

「……ふ、随分と威勢がいいな。召喚士は獣こそが役立ち、術者は見ているだけのはずだが? それともお前の見た目に反して、素の力が賢者の俺と違わぬとでも?」

「当然だ! ガンネア一の使い手に生意気言うな! お、おっさんのくせに!」

「はははっ! 口だけは達者の小娘がよく言う」

「違う違う違うー! 我は強いー! おっさんに負けぬのだ!」


 ガンネアという岩屋に着いて早々のことだ。


 民の殆どが小柄な体格で、ハッキリ言えば子供が集まって何かをしている様にしか見えなかった。


 しかしルシナの言葉に偽りはないようだと判断し、力の強そうな召喚士に声をかけたまでは良かったのだが、小柄な上に口調も態度もなっていない。


 竜人のストレよりは大きい子供だが、口の利き方がなっていない小娘に何を期待しろというのか。


「ま、まぁまぁまぁ、アクセリさま。相手は女の子なのですよ~? アクセリさまが大人げないことをされては良くないと思うのです~」

「お前が言う事じゃない! いいから、パナセはロサと共に休んでいろ! 俺の命令だ」

「は、はぃぃぃ」


 よほどロサと同じ部屋、空間にいるのが苦しいのか、パナセはしきりに何度も様子を見に来る。


 ここでの面倒ごとは出来れば避け、とっとと力を加えて空間の広い街に出たい所だ。


「アクセリに任せるけど、泣かせちゃったらどうしようもないんだからね? それでなくとも、エーセン族は気難しいんだから……」

「分かっている。小娘が余計な心配を抱かなくていい。ルシナの案内が無ければ、こんな所に来ることも無かったのだからな」

「そ、そうならいいけど。魔法を教えてよね!」

「無論だ」


 素直ではないが、意地の悪い女でもないルシナには、この俺自身も素直になればどうということはない。


 しかし見た目が子供な上、態度に礼を欠くこの種族をどう下してやろうか。


「この中で呼び出せとは言わない。外に出るか、あるいは召喚に相応しい場をお前が選ぶことだな」

「じゃ、じゃあ外だ! 岩窟の外に行く! わ、我の強さはすごいんだぞ!」

「いいだろう、俺も自然の見える外でなら要素が使い放題だからな」

「負け惜しみを言うなーーおっさんのくせに!」

「俺はまだおっさんと呼ばれるほどではないぞ? 尤も、お前のような小柄な者から見ればそうかもしれないがな……」


 内々に秘めたる力は嘘偽りを抜かしていないようだが、素直になれない小娘を連れ歩くには、骨が折れそうだ。


 しかし自称勇者といい、それを操る黒幕の存在が蔓延っているのをこの目で見た以上、もはや急ぎ進むしかないだろう。

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