14話 大賢者である私が簀巻きにされた上連行されたにも関わらず、残された面々は優雅に談笑していた件

ミリーが簀巻きにされ、連れ去られた後、

残された面々は何事も無かったかのように

暫し紅茶を楽しんでいた。

変わった点があるとすれば、

イケメン給仕も席に付き

紅茶を飲んでいるということだろうか。

そして誰もそれを咎めないが

それには理由がある。


「アレク兄さん大変だったね。」


フェル王子がイケメン給仕に話し掛ける。


「いや、自ら望んだことだしな。

いい経験になったさ。

それに、聖女様のご尊顔も近くで拝見させてもらえた。」


イケメン給仕の正体は王太子アレクシス。

その正体を知らなかったのはミリーだけだった。

ミリーがお代わりを頼む度にクーンがハラハラしていたのはそういうことなのだが

ミリーはクーンの恋心と勘違いした。


「ミリーは本当に聖女様なの?

食事見てる限りは、そう見えないんだけど。」


「フェルが寝込んだ時に、聖剣の試練と見抜けたのは

聖女様だけだ。その手助けをできたのもな。」


「そうなんだ。ミリーに感謝しないとだね。

今度きちんとお礼を言うよ。

本当は聖剣の鑑定の為に呼ばれたんじゃ

ないんだね。」


「ああ。それは聖女様のリリー達への配慮だろう。」


「ミリーは優しいんだね。

でもミリーをどうやって見つけてきたの?」


「それは私達から説明します。王子。

ミリーを見つけたのは実は偶然です。

最初は私達は王子が病気になったと考え

病滅の祈りを捧げていたのです。」


「そしたら、ヒーラー登録した冒険者がでたと

走りながら叫ぶ男がいてさ。

増援の為に連れて来たのがミリーさ。」


「そして偶然にも彼女が神の奇跡を授かる聖女様で、

聖剣の試練に気づいた訳です。

この出会いの奇跡も神様の思し召しに違いありません。」


クーン、カリス、ミルファが順に説明した。


「どうやら彼女本人は自身が聖女である自覚が余りないようだな。」


アレク王子が付け加えた。


「そうだね。ミリーは聖女様っぽくないよね

ミルファの方が聖女様っぽいよ。」


フェル王子が素直な感想を言った。


「私が聖女様なんてとんでもない。

ミリー様はあんな態度ですが、

とてもお優しく慈愛に満ち溢れたお方ですよ。

先程のお食事のお話も神の教えの通りです。

私達は神から命を頂き、他の生き物の命を頂いて

生きているのです。」


「ミルファはすっかりミリー贔屓になったわね。」


「ミリー様を1番気に入っているのはリリーですよ。」


「違いない。」


とアレク王子が相槌を打つ。


「あたしゃ、あれが聖女様だんて到底信じられないけどね。

爆食女王なら信じるけどさ。」


「私もよ。リリーから聞かされた時

信じられなかったから、

ミリーの部屋を魔法でこっそり覗いたら

一心に神に祈っていたわ。」


「神官殿の話では孤児院にいた頃から

よく祈りを捧げていたそうだ。」


「でも、あんなに騒々しいのに、目立ちたくないとか

言ってるみたい。」


「ミリーがいなくなったら急に落ちついた空気になったよね。」


「リリーも言っていたが、聖女様は存在感がありすぎる。

聖女様自身は不本意かもしれないが、目立たず生活するのは無理だな。」


今日の様子から、アレク王子もリリーの意見に

賛同せざるを得ないと結論付けた。

あれだけ目立つ聖女様を隠し続けるのは不可能だ。

早めに王家としての対応の準備を進めた方が良いだろう。

アレクは苦笑しながら考える。


「あたしゃ初対面の王子様に対しても態度が変わらない方が凄いと思ったね。

頭のネジ飛んでるじゃないか?」


「そう言えばAランク冒険者の私達にも対等だったわね。

あそこまで物怖じしないのも一種の才能だわね。」


「ミリー様を見ておりましたが

どなたに対しても等しく同じ態度でした。

神に使える身からしてみれば、皆等しく神の子ですから

ミリー様の言動は納得できます。」


「最初こそ敬語だったけど、すぐに打ち解けて

僕は嬉しかったな。ミリーは僕の友達だよ。」


「フェル王子!いつそんな約束を?」


「昨日の夕食の時だよ。ミリーは オッケーって。」


「随分軽いノリだね。わかってるのかねぇあの娘。」


フェル王子は兄のアレクが普段見せないような

柔和な表情を見せているのに気づいた。


「アレク兄さんもミリーを気に入ったみたいだね。」


「どうかな。面白いとは思うがな。

そうだな、今回のような形でなく

ゆっくり話をしてはみたいものだ。

私が考えもしない発想を聞けそうだ。」


<ミリー様はこの場にいなくても

皆を和ませるのですね。>


ミルファはここにいないミリーの話で盛り上がる皆を見て、

ミリーの人徳を感じるのだった。

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