第110話【膝枕】

「お兄ちゃん達何してるの?」


俺と沙耶がバーベキューコンロを水で流しながら掃除していると着替え終わって降りてきたカエデに声をかけられた。


「見ての通りバーベキューコンロが汚れてたから洗ってんの。

あ、母さんに炭は足りそうだけど新しい網がもう無いから買ってきてって電話しといて」


「おっけー。

他に足りなそうなものってあるかな?」


「さあ?

母さん達、買い物行ってから帰ってくるんだろ?

とりあえず必要なものを書き出してそれをメッセージで母さんに送っといたらいいんじゃないか?紙皿とか割り箸とか」


「そだね。

じゃあ、送ってくるー」


カエデはそう言って家の中に入っていった。


「快人くん、もうこのぐらいでいいんじゃないかな?」


俺とカエデが話しているあいだも黙々と掃除をしていた沙耶が言う。


「うん、いいんじゃないかな?」


俺達は庭にビニールシートを敷いてその上にバーベキューコンロを置いて乾かすことにした。


「ふぅ〜」


「私達って他になにかやることってあるの?」


やることが無くなった俺と沙耶はリビングのソファーに座ってまったりする。


「ないんじゃないか〜?

ふぁ〜。

なんか眠くなってきた」


「ん?

じゃあ、誰か来るまで寝る?」


欠伸をした時に出た涙を拭っている俺に沙耶が聞いてくる。


「うん。

そうするわ」


「よし!

ちょっと待ってね」


そう言ってソファーにラフな感じで座っていた沙耶がしっかりと座り直し太ももの当たりを軽く叩いてホコリなどを取った。


「何してんの?」


俺は何となく沙耶が俺にさせたいことがわかったがあえて聞いてみる。


「ん!」


沙耶はそれだけを言って自分の太ももをトントンと叩く。


「はぁ〜。

せっかくだしちょいと失礼するかな」


俺はそう言って沙耶の太ももの上に頭を乗せる。

いわゆる膝枕というやつをやってもらう。


「あら素直」


「何驚いてるんだよ。

お前がやれって言ったんだろ?」


「いや、言ってはないけどね」


「細かいところはいいだろ。

てか、誰か来たらちゃんと起こしてくれよ」


「おけー任された!」


「ほんとかよ」


「信用しなさいな」


そう言って沙耶は俺の頭の上に手を当てて軽く撫で始める。


「おい、恥ずい」


「気にしなさんな。

子守唄も歌ってしんぜよう」


沙耶は頭の上に手を置いたまま子守唄を歌い出す。

その声は綺麗で心地よく瞼がだんだんと重くなっていく。


あ〜。

本当に寝そう。

凄く眠気を誘ってくる声だな。

何も考えられなくなってきた。

もういいや、寝よ、おやすみ。


そうして俺は意識を手放し夢の国に旅立って行った。

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