第42話【食卓】

料理をダイニングテーブルに運び終え、椅子が足りなかったので違う部屋から持ってきたりして、全ての準備が整った。


料理のメニューは、カエデが提案したパエリア、サラダ、スープとなっている。


パエリアとサラダは席の真ん中に大皿で置いてあり、各席の前には取り皿とスープが置いてある。


どれもこれも美味しそうでカエデなんかはもうヨダレが出そうな顔をしている。


あ、こら!

つまみ食いしようとするんじゃない!


「今日は一日お疲れ様でした。

それでは、いただきます」


「「「「いただきます!」」」」


何故か母さんが会社の飲み会みたいな音頭をとり、それに合わせて他の四人が挨拶をして食べ始める。


俺は、真ん中の大皿にあるパエリアを取ろうとした。


「あ、快人くん、私が取ってあげるよ!」


「え?

いや、別に自分で出来るが?」


「いいじゃない、やらせてよ」


何故そんなにやりたいのか俺にはこれっぽっちもわからない。


「いいじゃない。

別に減るもんじゃあるまいし」


俺が困っていると母さんがそう言ってきた。


まあ、そうだな。

別に減るもんじゃないしな。


「じゃあ、お願いするよ」


俺は、沙耶に自分の皿を渡した。


「やったー!

好きな男の子に大皿にある料理を取り分けるのって夢だったんだよね〜」


沙耶は嬉しそうにパエリアを俺の皿に盛り付けていく。


そんなに嬉しそうにされると恥ずかしくなってくるな。


自分の顔が赤くなってきていることを自覚したとき、周りからの視線に気づき母さん達の方に目をやる。


「「「ニヨニヨ」」」


母さん、カエデ、美陽さんの三人は揃いも揃ってニヨニヨと気持ちの悪い笑いかたで俺を見ている。


俺は、その三人を強くにらむ。


すると三人は顔を逸らし、口笛を吹く。


「もう!

みんな何やってんのよ!」


パエリアを取り分け終わった沙耶が俺達のやっていたことに気づき声を上げる。


「やっぱり大人数での食事は楽しいわね」


美陽さんがボソッっとそんなことを言った。


そう言えば、松本家は主人を亡くし、沙耶と美陽さんの二人暮しだったな。

美陽さんも忙しいみたいだし、一人で晩御飯を食べることも多いいのかもしれない。


「そうですね。

また、みんなで集まって晩御飯を食べましょう」


「ありがとう」


美陽さんは今日あってから一番の笑顔でお礼を言った。

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