第21話【お泊まり?】

時計を見るともう九時を回っていた。


「あ、松本さん、もうこんな時間だけど帰らなくていいの?」


「え!もうそんな時間なの!?

そろそろ帰らなくちゃ!」


「え?沙耶ちゃん今日は泊まっていくんじゃないの?」


母さんが凄いことを言い出す。


「いえ、そんなことは」


「明日は土曜日よ。

何か予定あるの?」


「いえ、ありません」


「じゃあ、いいじゃない」


「えーと」


松本さんが困っているので助け舟をだす。


「別に無理にとは言わないよ。

松本さんにもいろいろあるのかもだしね」


松本さんは俺を見て少し考えた後答えた。


「えーと、お願いしてもよろしいですか?」


「やった!沙耶さん泊まってくれるの!」


「じゃあ、沙耶ちゃん座って座って、もっとお話しましょ」


松本さんが泊まると聞いて母さんもカエデも大喜びである。


「ちょっとお母さんに連絡入れときますね」


そう言って携帯をだし、廊下に出ていった。


「話し過ぎてまだみんな風呂入ってなかったな。

俺先に入ってくるぞ」


「いってらー」


そうして俺は電話をしている松本さんの横を通り風呂に入った。


体や頭を洗い終え湯船に浸かる。


「ふぅ〜。

松本さんもうちに慣れてきたみたいだし良かったよ。

それより松本さんへの返事どうすっかなぁー」


一ヶ月後、今日が五月十日だから六月十日に答えを出すことになっている。


松本さんのことは好きか嫌いかで言うならもちろん好きだ。


だがまだ自信を持って好きとは言えない。


自分でもわかってるよ、何贅沢言ってんだって。


この機を逃せばこんなこともう起こらないってこともわかってる。


ただのヘタレだってことぐらいわかってるよ。


「はぁ〜俺は何してるんだろな」


そう言いながら天井を見上げ目を閉じた。


「お兄ちゃんいつまで入ってるの?

後つかえてるからから早く出てきて」


「うわ!

お、おう、わかった!」


ボーとしていたら結構な時間が経っていたみたいだ。


慌てて風呂を出て、髪を乾かしリビングに戻った。


「お待たせー。

誰か次どうぞー」


「ホントだよ!

お兄ちゃん長すぎ」


「あー悪い悪い」


「じゃあ、松本さん一緒に入ろ」


またカエデが変なことを言い出した。


「え!?」


「いいじゃん、女同士なんだし」


「えーと」


松本さん今日で何回、俺ら家族に困らされたんだろう?


「松本さん嫌なら断っていいよ。

カエデは俺が何とかするし」


「何とかってなによー」


「よし!カエデちゃん入ろうか!」


「よし来た!」


まー何だかんだでいいコンビなのかな?

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