第5話【喫茶店にて(後編)】

その沈黙の後まだ俺が何かやっていたのか松本さんが話し始めた。


「あと、佐藤くんは私をいやらしく見ないからって理由もあるよ。

たまに見られてるなぁーって思うときはあるけど他の人と違って下心丸出しって感じじゃなくてあまり嫌な感じしないし」


「たまに見てたのバレてたんだ。

なんかごめんね。

俺が松本さんをそんな目で見ないのは他のやつと違ってちゃんと松本さんと俺の差をわかっているからだと思うよ」


「いや、別にいいよー。

佐藤くんに見られるなら逆に嬉しいくらいだし。

えっと差がわかってるってどうゆうこと?」


「これは例え話しだけど、1枚の鏡の箱の中に自分の大好物があったとします。

その時、松本さんならどうする?」


「どうにかして食べたいって思って行動するかな」


「だろうね。

じゃあその大好物が何十枚、何百枚もの強化ガラスの箱の中にあったら?」


「んー、食べたいなぁーとは思うけど、そこまで厳重なら諦めちゃうかなー」


「そう言うこと。

俺と松本さんの間に何十枚、何百枚もの壁が存在しているって俺自身がちゃんとわかっているから、可愛いなぁーって思って見ることはあっても、どうにかしてお近付きになりたい、出来ることなら付き合って欲しいなんて考えれないんだよ」


「なるほどね。

あ、でもこれからはその壁たちをとっぱらってちゃんと意識して見て欲しいなぁー」


「ぜ、善処する」


「うん、今はそれでいいよ。

私、頑張るから」


それからは何てことない話をしながら楽しく過ごした。


「そろそろ暗くなるから帰ろっか」

と松本さんが切り出した。


「おう、帰るか」


俺はそう返事して席を立ち、会計を終わらせて外へ出た。


意外と長い時間話していたらしく空は暗くなり始めていた。


「俺は家その辺にだけど松本さんは電車だよね?

駅まで送っていくよ」


「ありがとう。

じゃあお願いしょうかな」


駅へ向かって歩き出したその時あることを思いました。


「そう言えばタツに今日のこと、松本さんがいいって言うところまで教えるって約束したんだがどこまで言っていい?」


「んー、別に全部言っていいよ。

明日からガツガツ押していくからすぐみんな気づくと思うし」


「お、おう。

わかった」


それから特に意味の無い雑談をしていたら駅についた。


「そうだ!連絡先教えてよ」


「ああ、いいよ」


そう言って松本さんと連絡先を交換した。


「じゃあ、また明日」


そう言って俺が立ち去ろうとした時。


「ちょっと待って」


と言われて俺は足を止めた。


「明日から佐藤くんのお弁当も作っていくからお弁当持ってこないでね」

と松本さんが真っ赤な顔で俺に言って改札の方に走っていった。


俺はいきなりのことに驚き、何も言えず松本さんが見えなくなるまでそこに呆然としていた。


「か、帰るか」


まだ完全に状況把握を出来ていなかったがとりあえず帰ることにした。


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