第85話 英才教育

 石鹸を買いに美容室へ行った。

 美容師一人で営む小さな店だが、流行っている。

 彼女が独立する前から、シャンプーや石鹸などは、彼女から購入している。

 頭皮や肌の調子から選んでもらっているのだ。

 そう…容姿が悪いのは致し方ない…せめて清潔感は、いくつになっても気にしていたい。

 汚いおっさんにはなりたくないのだ。

「2個でしたよね」

 小柄で派手な顔立ち、かなりの美人なのだ。

 彼女の母親も美人だ、タイプは違うが遺伝するのだろうか?

 ヒョコッと彼女の娘が顔を出した。

 3歳くらいだろうか?

「ママ、○○ちゃんママ、まつエク?」

(何? 何て言った)

「まつエクじゃないよ」

 彼女が娘に答える。

「まつエクとか知ってるんだね」

「アハハ、覚えるみたい」


 そういえば、いずれ親子で美容院やりたいとか言っていたような…

「この歳から…ある意味、英才教育だね」


 やたらと愛想のいい娘、

「バイバイ」

 僕に手を振る。

「バイバイ」

 僕も手を振り返す。

 娘、ちゃんとドアが閉まるまで見送るのだ。


(コミュ力高いな…商売人の子供は)

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