第75話 危機の果て

 人間は、利己的だ。

 危機に直面すると自衛が前面にでてしまう。

 それは種の本能、当然の行為でもある。

 ある人は暴力で言葉で、他人を遠ざけようとする。


 だけど…人は、無意識に手を差し伸べることもある。


 倫理の振り幅は大きくも、その行動の良し悪しは問わず、人は利己的なのだ。

 冷徹な悪魔にも、慈悲溢れる神にも近しい行動をとる。


 それは危機に直面すると、現れる利己的な遺伝子、僕らは差別も区別もできる。


 危機と上手に付き合わなければならない時代に付いていけない人がいる。

 諦め開き直る人もいる。

 関係ないと言い切る人もいる。


 そんな中で危機に向き合う人に手を差し伸べる人もいる。

 それに感謝で応える人がいる。


 危機に試されているのは倫理観ではない。

 自分の本質なのだ。


 人種、国を超えて励まし合う人を見て、そんな風に思えた。

 行動の制限は苦である。

 だけどそれは人の優しさなのではないだろうか?


 少しだけだけど、そう考えると気持ちが楽になった。


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