第61話 この一言

『なにもこれで逝かなくても…』

 とある芸人がコロナで逝った芸人を惜しんだ言葉である。

 多くの人が、その急な死を惜しんで、様々な言葉が飛び交う中で、心に響く言葉は無かった。

 ある人の言葉に反論があり、奥底にある想いは一緒のはずなのに…。

『悔しい』『ありがとう』『お疲れ様』

 そんな感情が言葉にすると棘を纏う…

 なぜ?

 皆、悲しいはずなのに…

 それは言葉で自分の感情を伝えるには、あまりに言葉は脆弱で…それがもどかしくて棘に変わる。


 そんな中で、『なにもこれで逝かなくても…』

 この言葉が僕の胸にスッと入って…棘が落ちた。


 あぁ…コレが言いたかったんだ…


 難しい言葉などひとつもない。

 少しだけ泣いて…

 その簡単な答えに僕は笑った。

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