第9話

10月22日、俺は誕生日を迎えた。これで17歳。とはいえ、この日は何もない平日。朝起きても特に変わったことはない。居間に上がって朝食を食べて学校に行くだけだ。


目を覚ました俺はトイレを済ませ、顔を洗い、歯を磨き、居間に上がる。そして・・・




「俊彦(お兄ちゃん)、お誕生日おめでとう!!!」




目が覚めて居間に上がった俺にかけられたのは、父と義母、そして義妹の熱い声援だった。




◇ ◇ ◇




朝食を済ませた俺は学校に向かった。いつものように駅でアリ姉・明日香と合流。さーやんとは学校の方向が違うのでここで別れる。電車の車中、明日香が、




「そういやトシって、今日が誕生日だよね」




と言ってきた。するとアリ姉も、




「あ、そういえばそうだだったわね」




と言う。そして俺は、




「そうだよ」




と2人に返す。すると2人は、




「おめでとう」




と揃って言ってくれた。




◇ ◇ ◇




学校では特に何もなかった。普通に授業を受けて普通に昼食を食べる。そして学校が終わったら部活。いつもの通りだった。そして夕方、こちらも部活に参加していた明日香と合流し、2人で一緒に帰路につく。ちなみにアリ姉は先月の文化祭を最後に引退。今年の文化祭は色々あったけど・・・まあ、詳しい話は後で語るとしようかな。今日は学校が終わったら即、塾に向かって受験勉強をしている。そして、駅で明日香と別れる際、




「そういやトシ、これから沙弥香ちゃんから大切な話があるみたいだよ」




と俺に言ってきた。




◇ ◇ ◇




家に戻ると誰もいなかった。しかし父さんから「これからみんなで食事する」と言うLINEが届いており、俺は父さん・楓さん・さーやんがもういるというレストランに向かった。レストランに入り、店員に案内された個室に向かうと、すでにこれから食べようとしている3人がいた。




「俊彦、遅い!お前、今日が何の日なのかかわかってるのか?」




父さんが俺にこう言ってきた。はい、わかってますとも。




俺は席に着くと、ステーキセットを注文した。他の4人は僕が食べている途中にもう食事を済ませた。そして僕が食事を食べ終えようとした時、店員さんがやってきた。




「石見様、バースデーケーキを用意致しました」




店員さんはそう言い個室を出る。しかし店員さんの言葉、そして『Happy Birthday to Toshihiko 10.22』と書かれたチョコレートが載せられたケーキは・・・




そして、3人は声を揃えて俺にこう言ってきた。




「俊彦(お兄ちゃん)、誕生日おめでとう!」




3人はそう言い、それぞれ俺に誕生日プレゼントを差し出した。そしてさーやんは、




「お兄ちゃん、私から大切な話があるの。聞いてくれる?」




と俺に言ってきた。俺は、




「何の話?」




とさーやんに言った。するとさーやんは、




「私、俊彦お兄ちゃんのこと大好きだよ。これからもずっと一緒にいたいなぁ・・・」




と笑顔で俺に言ってきた。どうやらさーやんから大切な話はこれのようだった。そして、俺がさーやんから初めて『大好き』と言われた瞬間でもあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る