第482話―パワーアップやまびこ香音2―

片付けながら思う。


(流しそうめんってこんな接待的なイベントだったけ?)


せっかくの時間をわざわざ平民で現状を変えようとしているが自己研鑽しか現在していない俺なんかに香音は

家に来てくれた。

接待みたいな流しそうめんをさせられたが香音が不平不満を言いながらも

楽しそうに笑っていたり満足そうなので接待した意義はあったと思う。


「ねぇ、これ終わったら上で麻雀マージャンしない?たしか押し入れの中にあったよね」


蛇口から流れる水で皿を洗っていると背中から香音の声が耳に入る。

一瞬これ誰に言っているのかなと思案したが先程そうめんを食べていたから話し相手が俺しかいないじゃないかと

遅れて気づく。

驚いたのはこれだけではなく香音の発した声音、いつもは急かすような催促か攻撃的なところ一変しており否定されたらどうしようかと狼狽みたいな

声だった。


「麻雀か…いいよ」


「そう……やった。

じゃあ手伝ってあげるわよ。これなら早く終わるでしょう」


どうやら洗った皿を拭いてくれるみたいだ。手を煩わせるのもどうかと思い断ろうと思ったが早く遊びたいのもあるし何もしない罪悪感あるかもしれない。ここは手伝わないよりも、やってくれた方が香音の心をスッキリするかもしれないと考えた。

終わると引き出しから前に比翼が遊ぶかもしれないと買ったものが置いてある。結局はほとんど遊べなかったが

今になって利用することがあるとは。

上と言っていた。そして廊下で遊ぶものでもないし弟の部屋で遊ぶのかと思ったが香音は自分の家のように俺の部屋に向かってドアを開けると、そのままくぐる。

知っていましたよ。こうなることをね、中央に置かれているテーブル挟んで遊ぼうとしたが香音は別の所を見ていた。向かいに座っている俺と目が合うからとか恥ずかしいのかと思ったが気持ち悪くて見るに耐えんという

意味やもしれぬ。そうだとすれば

立ち直れない。だが香音の視線を追えば俺のデスクの上をロック・オンしていました。

ふむ、なになに?昨夜に開いて冬雅たちとの日常を写真に撮って収めた写真集ではないですか。

こういうものがあると唐突に振り替えたくなる時があるもの――興味津々そうだし見せてあげるか。


「香音よかったら見るかい?」


「何を言っているの。でもなかなか見れるものじゃないし見てあげるわよ」


こうした上から目線を慣れてしまう一周して落ち着くような効力を宿る。

これを変態の境地という。

さて、そんなバカなこと置いておいて香音は飛びつくように写真集のある机に駆け寄る。そんな無邪気な反応を

見ると、まだ子供なんだなと実感。

まぁ俺も心が子供から大人になれていない部分が少なくともあるモラトリアムなので人のことを言えないが。

なにか飲み物を持ってあげようと俺は一階に降りて2つのコップにソーダを注いでいく。二人分のコップをそのまま片手で持ち上がると――


「きやああぁぁぁッーー!?」


「かのん?……はっ香音!」


もしかして不審者が入ってきたのかと俺はコップを落とすのも躊躇わずに中へ入るとそこにあるのは香音の歓喜した踊りであった。


「ま、まさかっ…真奈様の水着姿や着物まで!?こ、こんな貴重なものどんなことすれば拝めるというのよ。

あっ!あんた売ってくれない。

もちろん高く買うわよ」


「高く買われても困るのだけど。

いや、それより先程の叫び声って」


もう悲鳴じゃなくて歓喜の叫びなのが分かりきっているが一応。そう

一応もしかしたら予想とは違う回答が返ってくるかもしれないのだ。


「そんなの真奈様の崇高な姿に決まっているじゃない。

これ…JK時代の真奈様だよね。ヤバい…これ凄くヤバいよ。

オッサンやオバサンじゃないけどJK時代の真奈様が写真がいっぱい!」


どうしようかな。

もうどうしたら暴走する香音様をおとなしくさせるのか神よ、仏様よ!

この愚論なわたくしめに天啓を与えたまえ。

古代の日本の宗派には神よりも上位が仏様と概念として信仰していた。

平安ぐらいになると垂迹すいじゃくという仏が仮の姿で地上に舞い降りると考えられるようになる。

ふむ、こんなことしている場合ではないよね。どうすればよいのか。


「ねぇ、他にも無いの?私もっと見てみたいなぁ……あわわ。なんて」


あざとい。なんて超絶に、あざといものがあるのか。

上目遣いで甘声である。絶対に香音ならしないであろうことを当たり前のように振る舞っている。


「くっ、分かった。

こうなったら香音まだ他にもあるけど見るかい?」


「わーい、やった」


「……その萌えキャラやめませんか」


そう言っても香音は首を傾げる。

微笑んだまま、どうやら真奈様(つい香音と同様に様づけした)の拝むまでは続けるようみたいだ。

俺は天井を見上げながら盛大にため息をこぼすのであった。

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