第408話―風景が一層と彩ってゆく桜狩り―
もう少しで卒業する。まだ断片的にあった認識は日を追うごとに強く思えてくる。卒業したら、この先どうなるんだろうという不覚的な未来に恐怖に駆られることは少しだけある。
「あ、愛しています…大好きで世界一よりも大好き!行ってきますねぇ、お兄ちゃん」
欠かさずに大好きという気持ちを言葉にして外に出るのは清々しく、
不安を希望と刹那な時だけどさせてくれる。もし、わたしが女子高生で無くなったら峰島冬雅、ただのかわいい女の子が果たして、お兄ちゃんは愛してくれるのか?ふと考えてしまうのです。
2年もいれば、ある程度の趣味嗜好は分かってくるし好みの女の子だって推測の域ですけど知る機会はたくさん、ありました。
(そう、推測にしか過ぎないし自意識過剰かもしれないけど…お兄ちゃんのタイプは、わたしになっているような気がします。
本人は隠していると思っているでしょうが反応を見れば一目瞭然…だと思います)
やっぱり同棲生活は知らない面の発見のちょっとした採掘場。可能であるならこれ先も同棲はしたい。
と、それよりも優先順位が上の方に思考しないとだ。
お兄ちゃんの好きなタイプ。わたしが調べて理想に近づこうと努力の結果そうなったかもしれないけど、それだけじゃない気がする。
お兄ちゃんの好きなタイプが変化したとすれば、それも計算して常に情報の更新しておかないと。
(変化…それって、わたしにも好き嫌いも変化しているのかな)
今まで以前と現在のわたしが持っていた理想像の変化を考えてみたが、よく分からなかった。
自分のことになると客観的に見ようとすれば返って見えなくときもある。そう結論づけて別の方向へ思考する。
「やっぱり大学生になったら、お兄さんはお弁当これからも作ってくれるのかな?」
「えっ」
「あっ、…ううん。何でもないよ」
わたしに対しての言葉ではなく呟きだった。真奈も卒業したら、どう立ち位置になるのか不安があるようだ。
途中から茜と合流して学校へ。
…そういえば、この3人で学校に登校や下校するのも少ないのか。昔のわたしであるなら学校や家のことなど感傷的になっていると無かっただろう。無関心でどこまでも色褪せった景色が広がっていた。
恋というものは、ここまで人を明るくさせるものなんだ…いえ、本当に好きな人と相思相愛の中。お兄ちゃんだからこそなんでしょう、きっと。
教室に入ると…同級生が倒れていた。
黒髪のミディアムヘアと長身の容貌が優れた少年、名前は確か
「ぐっ、クソッ…まだだ。俺には美少女を落とすためであるなら恐怖を乗り越えるんだぁぁ!!」
不屈の闘志によって彼は立ち上がろうとする。表情や声だけならカッコよかったのだけど…動機が
相変わらずだった。
(ま、また女の子にナンパしたのかな?相手の彼氏にボコられてしまったとか…)
「ちょっと一弥世!?いい加減にしなさいよ。それ以上したら…」
立ち上がろうとするのを止めようとして隣に屈んで両肩を手で置いて止めようとする同級生。
この二人は幼馴染で腐れ縁な雰囲気があることで校内で有名。
「止めようとしないでくれ。僕は…まだ終わるわけにはいかないんだ。それに…不思議なんだ。
まだ知らない未知なる領域に足を踏み入れて心が高揚しているんだ」
「それ、目覚めたらいけない奴!?あっ、おはよう」
柿崎影姫さんは、教室の出入り口の前に気配を感じたのか、わたしたちに気づき挨拶をする。
「お、おはよう柿崎さん。今日も色々と大変みたいだねぇ」
「そうなのよ。コイツ卒業は
わたしたちに説明してくれたことに羞恥心に堪えられずに絶叫。
反応に困るから苦笑しているけど対応に困ってしまう。このまま行けばいいのか助言をすればいいのか。
「おや?そこにいるのは美しき花たちではないか。よければ僕と付き合わないかい?テニスや彼女もいないから狙うなら今のうちだよ」
挨拶するみたいにナンパしてきた。…ここまで行くと呆れよりも称賛の気持ちが湧いてきてしまう。
「ごめん。わたし好きな人がいるの」
「えっ、
本気なのか冗談か分からないがナンパに、わたしは想う人がいると断った。それが失敗だった。
もう卒業するから隠す必用もないかなという楽観視による心理的な要因。
大きく関心を持ったのは質問をする柿崎さんだけには収まらず、近くにいた生徒ざわめく。
「あの白い太陽が好きな人がいた…だとっ!?」
「ば、バカな…最後に思い切って告白しようと決めたのに……」
「い、いや前向きに考えよう…
われわれを恋愛から救うものは、理性よりもむしろ多忙である。
だから俺は……忘れるぐらい大学生活にエンジョイするぞ!」
知っていたけど男子から嘆きの声はあったものの一部の中に何故か名言を引用する変わった人もいた。
女の子たちは相手は誰なのかと憶測や興味を向けられたりとしていた。
「それなら…平野真奈、よければ僕と付き合ってくれな――」
「どうやら、まだ足りないみたいようだね…お仕置きが」
擬音語にゴゴゴが現れていそうな不穏な空気を放ちながら近づくのは羽柴香音。それまで騒いでいたのがシーンと静まり返る。この学校は知らずに領域展開されていたみたい。
「あっ、香音だ。おはよう」
しかし真奈はいつものように手を振ってを香音に挨拶をする。
「あまり厳しいめな
続いて茜も手を振って笑顔で挨拶をする。わたしも二人に見習い挨拶しようとするが「お、おはよう」と上手く出来なかった。
「ふっ、お仕置きか…いいだろう。未知なる力を覚醒した今の僕には苦痛ではなく喜びを覚えているよ」
「い、
カッコイイ表情で言うと、その幼馴染は冷たい目で指摘する。
「お、おはようございます真奈様、おはよう茜。
…さて、来てもらおうか?」
こ、恐い!?あんなに顔が変わるものなの。怒りの矛先を向けていない第三者にもビクッとさせる威力に向けられた側は喜々とした表情を浮かべていた。
…どうやら手遅れもかもしれない。色んな意味で。
「い、いったいどんな命令されるのか?グラウンド十周かな。もしかして逆立ちで回れかもしれない」
どうやらムチで叩くアレではなかったみたいだ。そんなことを口にしたら変態あつかいされるので呟かないよう気をつける、わたしだった。
――高校もわずかとしみじみと感じなら授業を受け、気づけば放課後。
「あ、あの冬雅さん…一緒に遊びに行きませんか?」
「一緒に、うーん…」
帰宅しようと準備していると机の前に陰が降りる。これは人影と分かると視線を上げると黒髪を短く整えていて、子柄でおとなしい女の子
いますぐ帰ってお兄ちゃんとイチャイチャしたいけど会う回数も減る。
「うん、いいよ」
「…ほ、ほんとに?」
「うん、本当だよ」
「う、嬉しいです」
頬を赤らめて屈託のない笑みを浮かべる。お兄ちゃんと離れないといけない苦しい時期に国絵とは外で遊ぶようになって仲良くなった。
わたしは、お兄ちゃんにラインで友達と遊んで行きますので帰りは遅くなると思いますと内容を送ってカバンを持って立ち上がる。
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