第400話―リサーチのためにマッチングアプリをする2―

エミリーさんの仕事部屋。

恋愛をより情動に訴えられるシーンを書けるようにするには、どうすれば良いのか試行錯誤中でいた俺はマッチングアプリを耳にして飛びついた。


「よーし、ここで借りを返す時が来たあぁ!それじゃあマッチングアプリを説明を始めるよ」


タブレットを机に置き、チェアから立ち上がった今のエミリーさんは絵を描くという覇気が抜けていき気楽が全開。

もはや別人のようにクールさから遊び人と形相に俺の後ろに立つ前原さんは嘆息を零す。


「突然のお願いを快く返事ありがとう。どうぞ、よろしくお願いしますエミリーさん」


唐突なお願いにも嫌な顔をせず、やる気に満ちる彼女に頭を軽く下げて重たいと引かれないよう気をつけてお礼をする。


「おぉー、なんて響きのいい…であるからして大船に乗ったつもりでいたまえ山脇くん」


「何が大船なんだよ、ボロ船の間違いだろ」


「はい、そこ!授業中に喋らないことアシスタントの一誠くん」


「…なぁ、こんな今にも壊れそうなエミリー号よりも僕が教えてあげますよ。これでも利用しているから適切な助言は出来るはずだよ」


こんな年なのに左ウインクが決まる年齢がそう変わらないイケメンさん。

まさか利用していたことに驚いてしまった。本職はビジネスマンで夢は漫画家を心目指すアシスタントの二足の草鞋を履く彼に…聞いていいのか不安になった。

貧富の差があるとはいえ恋愛ではそこを優劣をこだわる時代と共に薄れていっている。どれを見ても性格や容姿など優れておりモテるのは一目で見れば誰でもそう思うだろう。

俺が抱く心配の種は、経験が浅いとかモテる奴には分からないなどではなく…空間に生じる物理的ではない性質のもの。


「は、はぁっ!?待ってくれない。マッチング登録してんの?

なんなの、聞いていないんだけど…」


「別に報告義務とかあるわけ無いだろ、そんなの。まさか利用していているからって理由で機嫌を損ねたなんてなら、お過度ちがいだ」


懸念していたことが現実となってしまった。変な造語よりも利用している事に怒りを顕にするエミリーさんに対照的に前原さんは主導権を取ったみたいな広角を上げて

嘲笑を浮かべている。

そこに立つ俺は止めるべきか見守るべきなのか迷う。


「何を言っていんのか分かんないけど?そんなことよりも彼女とかいるの」


「どうして教える前提なのか甚だ疑問だね。そんなんだから、いい年をして恋人がいないんだよ。

エ・ミ・リ・ー」


ちょっと前原さんそれ敵が作りそうなセリフですよ。なんだか怖くなってくるのですが!?


「ニヤニヤ笑いやがって…それブーメランだからなぁ一誠のオッサン」


「はああぁぁッ!?同い年なのにオッサンなんて言うなよ。バカ、バカ」


「バカと言う方がバカって知らないの。ププッ、やっぱりバカだから分からないんだ」


「あー、バカがいくら言っても届かない。やっぱりバカのセリフだから」


…な、なんだろう。ヒートアップしていく内に語彙力がなめらかに落ちていくのは。見下すような発言で煽り攻撃をしていた前原さんであったがエミリーの感情から罵られて似たような反応を起こして

おり繰り返していく。

もし、この場面を冬雅の友達である滅多なことでは驚かない三好さんもびっくりな喧嘩だ。20代後半の罵り合いは、それはもう…どこに出せないほど小学生レベルだった。

この二人は確実にお互いを好いているんだろうなぁ。じゃなければ機嫌を悪くしたりしないはずだから。


(なんだか…ここで痴話ちわ喧嘩するなら俺がいない時にやってほしいかな。この二人を見ていると好きだからこそ嫉妬するんだろうなぁ。それが独占的から支配されそうになる欲であっても)


間に入って止めるのも迷惑になるのかなと変な気遣いだと分かりながらも一歩下がることにした、物理的にも二人の感情に割り込むのを躊躇うものがあった。

この夫婦喧嘩は犬も食わない状況を眺めていると、ふと思うのだ。


(もし俺と冬雅がこうして激しく喧嘩することなんて…いや、あるわけ無いか。俺と冬雅は、お互いに感情を吐露して包み隠さずに伝える取り方をする類を見ない特殊だし)


なんでも全力投球の想いをぶつけていくから一般的な恋愛をしない、出来ない。だからこそ作風にどうやってリアリティとファンタジーも少し混ざった恋愛描写を

紡げれるものかと悩んでいる、

冬雅たちが協力しても眼の前に起きている惨劇と呼ぶべきか迷い眺める。


「あはは。結局は彼女なしじゃん。ダッサイの、ほんとー見栄を張ってばかりで恥ずかしいでちゅねぇ」


「無駄に可愛い顔しやがって…いいさぁ。好きにしろよ、どれだけ罵倒しようがダメージはゼロ!

心はTUEEEつええぇーーなんだからなぁ。そういうことで実際に無敵なわけだから…分かったか!」


あかん…これ、聞いていて恥ずかしくなってくる会話だ。双方が矛を収めるのは数十分を経過してからだった。


「取り直して講座を始めます!」


――生産性のない無意味な争いがようやく終結してエミリーさんが腕を高々と上げて発言した。

やっただ。ようやく前を進めるようになった。落ち着くまで、おとなしく眺めたいた俺は頭が冷静となると冬雅や真奈に伝えずマッチングアプリを利用することに良心の呵責で申し訳ない気持ちになる。

やめようかなと考えてみたが悪魔でリサーチをするだけと自分に言い聞かせる。


「一誠が積極的に利用していないから説明するとね、複数あります」


「複数ですか?それでオススメは」


あらゆるものには玉石混交が激しいと認知されている俺は特に大きな反応をなく順序を飛ばして結論から聞こうとした。まぁ待ってと手を伸ばすエミリーさん。


「なるべく要点だけだから長くならない。いくらか質問するけど、

結婚する目的なのか交際が目的?すぐに出会うとかデートからなど願望を言ってみてみ?」


俺は手をアゴに触れながら思考をする…願望か。


「そうですね…どんな人でも絶対に交際なんて不可能な距離感が絶対と。年齢はなるべく若いと貴重な意見を聞きたいので、それも条件に。他には…食べて話すだけでしょうか?」


まず浮かんだ条件をいくつか述べてみることにした。さて、どこまで要求が通るのかな思いながら終わると二人は茫然自失となっていた。


「…残念だけど、それってデートや交際、結婚もしない恋人を探すアプリは無いかと思うよ。逆にどうして恋人を求めないマッチングアプリを使うのは、どうかと?」


あれだけ盛り上がっていく雰囲気を出していたエミリーさんは、どう反応すればよいのか分からず微苦笑を浮かべている。


「…山脇それってパパ活じゃないか?若い子を求めていたしロリコン」


批判的な冷たい目で前原さんがそう言った。囁くように呟いて言った内容は聞こえているが咄嗟に俺は否定が出来なかった。冬雅を大好きだと日が訪れる度に言っている。

そう解釈するのも仕方ない…交際しないで若い女性と話をして食事だけだとパパ活じゃないかと。

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