第388話―彼は試作の小説を書いてみた―

もし過去の自分が知ったら吐胸とむねを突くだろうなぁと思いながら向かいの位置で炬燵こたつに肩を触れて座る二人を眺めていた。


(うわぁー、二人をモデルにしたラブコメを見せるのが、こんなにも恥ずかしいとは…)


冬雅と真奈の二人は天板の上からPCの画面を真剣に見ていた。

ちなみに内容は…俺の現状とと変わらないと言っていい。失業したサラリーマンがニートになってから多忙の日々に追われていた。

今まで我慢していた事柄が開放されてからは自由に生きるとなかば自暴自棄になった。あらゆる趣味を開拓かいたくしてはやめたり挑戦としていた。

そんな生活を続けていき慣れて来て時にJKに告白されて、甘々の甘い現実スローライフ物語。


「お、お兄ちゃん…」


「ふ、冬雅!?えーと…どうだった。勢いで書いて苦痛な文書が目立つ拙作せっさくで申し訳ないけど感想をお聞かせてください」


「そんなひどいこと言っていないよ。自虐的になるの良くないからねぇ。本題なんだけど…

お兄ちゃんの小説を黙読した感想なんだけどねぇ」


とうとう告げられる…無意識からの緊張状態に固唾を呑んで待つと

冬雅の頬は再び赤くなると身体をもじもじと揺らして告げる。


「その…わたしには分からないの」


「分からない?ッ!?そ、それって見るに値しない底辺を超えて深淵を覗いたような恐怖と不安にさせて――」


「お兄さん落ち着いて。評価とかそれ以前と言うのか…とにかく、そうじゃなくて別の意味」


心の高ぶりとあせりが収まらずになる俺の早口を真奈が遮って優しく否定する。

どういう意図だろうかと考えてみるが、まったくと言っていいほど思いつかない。


「すごく感情的で簡単に別々で分けて出来るようなものじゃないの。わたしと真奈は特に」


きっと疑問符を浮かべた表情をする俺に冬雅が

説明を鈴を転がす声で継げていく。


「その、主人公の動機や行動からしてモデルがお兄ちゃんらしいと感じたよ。それに、わたし達を参考にして生まれたヒロインは

違う点を数えれるぐらい少なかった。

結論を言いますと主観で見てしまう。わたしは別の世界だって見るのが難しいかくて…」


「な、なるほど」


要約すれば、冬雅と真奈をモデルにしてヒロインとの物語を紡いでいくストーリーを、第三者視点での読むのが困難であった。

推測…でもないか、冬雅と酷似した動機を持つヒロインと重ねて見てしまったのだ。


「お、お兄さんワタシも1作品として純粋に評価をつけるのが難しいのが素直な意見なの。

…これは私見なんだけど、お兄さんとワタシをもっとデートシーンを増やした方が面白くなると思います」


「そ、そうか。確かに私見だね。

そこを考慮していなかったよ」


よもや真奈がデートを少ないと不平不満を口にするとは。

試して書いた小説の文字数は1万ほどで真奈とよく似たキャラとイチャイチャする描写やシーンは、

しっかりと入れたつもりだったのだが、満足してくれなかったみたいだ。

その要求を応えたら冬雅をベースにしたキャラの出番が著しく減ってモブに近いキャラになる。


(うーん、どうしたものか)


貴重な意見を貰えると思ったが成果は得られず。

単に俺がそこまで想像が出来なかっただけ非があるだけなんだけど。

これ以上を時間を無駄にさせないため後日に頼む流れにした。受験生である二人には時間という

ものは有限で貴重。なら、この試作は冬雅や真奈モデルにしていない他の人に頼むしかなさそうだ。

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