第344話―良い夫婦の日という定義崩壊―

今日の真奈は少しおかしい。


「お、お兄さん…その、ワタシの膝枕と言うか…寝心地はどうかな?」


「あ、ああ。悪くはないよ」


「う、うん」


午前8時に訪れてきた真奈に早すぎると思いはしたが会いたい一心で来たとすれば訊かないほうがよさそうだ。俺と真奈が恥ずかしくなる意味で。

手洗い済ませると右手を繋がられ温もりを感じながらリビングで真奈に入れてから台所に向かおうとしたが――「お兄さんたまには膝枕でもいかがでしょうか?」誘われた。

先に疑問を生じたのは、なぜ敬語だろうだった。


「じゃあ質問の内容を変えます。

膝枕は気持ちいい?気分を害した?」


「……気持ちよくないわけがない」


膝丈の紫がかった青く暗い色ネイビーブルーのフリルスカートの上に頭を俺は乗せている。

かなり目のやり場が困る。眩しほどの美脚、上を向けば膨らみがあってすぐに逸らせても後ろには真奈の服などかなりの至近距離。どれを視線を向けてもドキッとさせられる。


「もう本当に、お兄さんは素直じゃないよねぇ。ワタシこうしていられる時間は好きだよ…幸せで」


たじたじとしていた真奈は立ち直るのが早い。今は愛おしい人に向ける微笑を見せられている。


「……そう、なのか」


「なのかですねぇ。毎日とこうしていられたら本当に――」


切実に何を熱望する真奈。俺はきっと答えれない。一緒にはいられるのか分からない。


「真奈…どれが正しいのか答えなんかないのは分かった上で言うなら俺も真奈と隣でいられたら思ったりしていたんだ」


闇に彷徨さまよう俺をいつの間にか隣に微笑んでくれる真奈に救われて前を向きに生きられている。

けど俺が一番に愛しているのは冬雅。


「お兄さんもワタシと同じ気持ちなんて嬉しい。

フフッ、そうなんですねぇ…」


ナチュラルに頭をでられた。そろそろオッサンな俺に頭を撫でるほど楽しくないと思うのだが真奈の微笑みに微塵も感じず

好意を隠せていない。

それにしても眠たくなってきて

瞼が重たい。少しの間、目をつむろう。


「あれ?お兄さん2度目をするのかな。お休みなさい」


いや、目を閉じるだけで寝ないから。

……そのつもりであったが、目を覚ますと枕と掛け布団の中で寝ていた。そしてテーブルの上には

冷めても食べれる野菜の料理が置かれていた。


「おはよう、お兄さん。このセリフにもたらす心の響きがスゴイ」


「あ、あはは。そうか」


まさか、ここまで緑黄色野菜を使った品の数々を見れるとは。

どれもヘルシーで瑞々みずみずしく胃に優しい上に美味しい。


「美味しいよ真奈。本当に美味しいよ」


「ふふっ〜、やだ褒めるすぎだよ」


美味しいと2回を言うほど舌鼓を打ち、真奈は赤くなって照れていた。

あまりにも楽しく普段よりも癒やされた朝食は終わるのは早く感じるほどだ。昼前に遊びにやってきた花恋かながリビングに入って今の俺と真奈を見て、こう言った。


「わあぁーー!今日が良い夫婦の日だからなのかな?見ていて恥ずかしくなるほどイチャイチャするなし!」


花恋は人差し指を俺と真奈の交互に向けながら怒られる。その指摘に腑に落ちた。なるほど真奈が

積極的に感じたのは良い夫婦の日を意識してからなのか。

視線を向けると真奈は、恥ずかしそうに目を逸らされた。

図星?だと言う事でいいのかな。

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