第224話―GW視点は箙瀬比翼―

日が傾き陽光が変化していくのが見て分かる時間に、場所は少し狭めの部屋。


「どうして、そんな簡単な事も出来ないんだよ」


乱れた髪の女性は幼い、わたしに平手打ちをする。やめてと泣き叫んでも一向にやめない。


「こんな・・・頭の悪いのが娘なんて訳がない!」


反対の頬にも平手打ちを繰り返す往復ビンタ。学校の成績が悪いといつも暴力を振るわれる。

いたい、いたい、いたい、いたい、いたいっと泣き叫ぶしかなかった。


「うるせぇんだよ!!」


泣くだけ女性の怒りも増すのが、頭のわるい、わたしにも理解している。頭を強く上から引っ張られ

る。

怒りと悲しみがいっぱいになっていく――


「・・・・・」


意識が覚醒して過去に起きていた夢だったんだと寝台の上にいて気づいた。

箙瀬比翼えびらせひよ――わたしの幼い頃に体験した消えない悪夢の一つ。また、こうして

思い出すことになるなんて・・・

起きて早々に闇に支配されそうだ。

それが一人であったなら。


「すぅー・・・くぅかぁー」


同じ寝台には大好きな人と寝ている。その人と関係は一方的にわたしがおにいちゃんと呼んでいるが

実際は他人になる。

うなされる事が無かったら

おにいちゃんが先に起きていただろう。閉めたカーテンの隙間すきまから外が白む朝へと変わる日が差し込んでいる。


「おにいちゃん、こんなに無謀だと何をされるか分からないよ」


「すうぅー・・・」


寝ている愛おしい顔を見れるなんて幸せのあまり幸運が尽きないか不安になってしまう。

頬を右の人差し指でつんつん。


「くぅほー・・・すうぅー」


少し太り始めたのか頬が柔らかい。流石さすがに冬雅おねえちゃん達ほど弾力とか柔らかいさには大敗するが・・・おにいちゃんにだけはフワァーとパアァーと

幸せが沢山たくさんと溢れる。


「かわいい・・・中学生にこんな事をされて恥ずかしくないの?

ほらー、つんつん・・・えっへへ」


どうしよう困った。なかなかやめれない。まぁ、飽きるまで続けよう。つんつん、つんつん起きる気配があるけど起きない。カーテンのき目から明かりが鮮明になっても頬つんつん。


(このままキスしようかな?)


こんなに無防備だと、つい浮かんでしまい恥ずかしくなりブンブンと横に振る。


(だ、だだ、ダメ。おにいちゃんにキスすると冬雅おねえちゃん達が悲しむことになる)


もしバレないなんて結果になっても罪悪感で苛まれることになる。

罪悪感による苦しむ気持ちが無くなれば、おねえちゃん達に

恩を仇に返すことになる・・・もっとそれ以上な後悔がある。


(やっぱりキスするのは、おにいちゃんがわたしを選んでくれないといけないよね)


13歳も年下だけど恋愛対象になれるか困難だろうけど。


「んっ・・・・・比翼?おはよう」


ビクッ。肩が上がるほど驚いた。

この声を間違えるわけがないけど、違ってほしい・・・あー、はい

試合終了しました。


「おにいちゃん!?・・・・・

いつ起きたの」


「さっき目覚めたかな・・・ふわぁー」


「あ・・・そうなんだぁ・・・・・」


手で抑えて欠伸をする。今のわたしとおにいちゃんは仲良く同じベッドで横になっている。わたしよ目の前には、おにいちゃんの顔。

息が掛かる距離と横になって見上げる必要ない視線は同じ・・・

まるで恋人みたいで頭がバーンとなる。


(うわぁー恥ずかしいよーーー!)


話すのが恥ずかしくなり言葉を返すのも恥ずかしく距離を取るのも

なんだか違う。それにくっつきたい。


「比翼なんだか顔が赤くないか」


「そんなこと無いよ・・・えへへ、今のは冗談でおにいちゃんにドキドキしています」


部屋を出て一階の洗面所で顔を洗い歯磨き。こう一緒ですると、

なんだか理想な家族みたい。

タオルを渡して上げてお礼するおにいちゃん。洗面所の前で歯磨きを黙々するのとも。歯磨きの場合は居間でテレビ等を見てするのが

多いけど。

そして昼ごはん食べ終えて片付けた、おにいちゃんは言った。


「今日は子供の日だから、こいのぼり一緒に作らないか?」


「えっ?作れるの・・・うわぁーなんだか大変そう」


「いや、大きな鯉のぼりとかじゃなく小さな紙の鯉のぼりだよ」


「んっ?どういうこと」


小さい、紙ワードに不安になる。


「折り紙の鯉のぼりをね」


おにいちゃんが昔に使っていた折り紙を取り出してダイニングテーブルに置く。おにいちゃん隣に座り青色の折り紙を選び、おにいちゃんは橙色を選ぶんだ。もしかして冬雅がよく着る色を選んだじゃないのか気になるが別にいいか。


「えーと、どう折ればいいの?」


「実は俺も初めてで上手く説明が出来ないけど、頑張らせてもらうよ。えーと動画ではここを折って」


おにいちゃんの説明は拙く分かりにくい所が多かったけど、次第に慣れると説明も詳細になっていき

そこまでなると慣れるのも

わたしも同じである。


「えへへ、おにいちゃん完成しました」


「完成したか。初めてなのにスゴイよ比翼」


「えーへんだよ。折り紙の鯉のぼり小さくて、かわいい!」


どうなるか不安だったけど、小さいサイズと場所を置かない。

これ普通にお金を払ってもいいレベルだ。


「よし!完成した鯉のぼりを飾るとしようか」


「うん!」


わたしは首肯して、2つの鯉のぼりを壁に飾る。風による泳ぎ舞うことはないけど、それはそれで

飾りとして役目は果たしている。


(なんだか・・・こうして鯉のぼりが2つだけだと、わたしとおにいちゃんみたい)


わたしとおにいちゃんの関係は他人か神待ちに他の人は見えるだろう。幼馴染とか恋人でも親族無ければ隣人でも友人でもない関係。

けど、こうして一緒にいる。


(わたしとおにいちゃんの関係は・・・家族。本当の家族じゃないけど本物の気持ち)


わたしが昔に描いた夢は違うけど。幼い頃よりの想像したものとはかけ離れているし、おにいちゃんが大好きなのは冬雅おねえちゃん。

しかも、わたしと寝ても本当に妹

ように扱いするし5月5日に子供の日で祝うのもからして。

いつか大きくなって大好きな、

おにいちゃんと誰にでも認める家族になりたい。

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