第142話クリスマスイブを
「気になったんですけど冬雅おねえちゃんはどうして家が
違うんですか?」
テレビの前にある
「そうですね・・・お兄ちゃんとは家が別々で複雑な家庭なんですよ」
「ふーん、複雑な家庭ねぇ」
実際は妹ではなく勝手に呼んでいるだけの隣人さんだ。なるべく冬雅とは関係を
「そんなわけで、わたしがお兄ちゃんを大好きや愛しているのは、恋人に向けるものじゃないんだよ」
「えっ、う、うん?」
訊いてない質問に答えて戸惑っているよ冬雅。
「で、ですので
お、お兄ちゃん!わたしは、お兄ちゃんが大好きですよ。
だから・・・その・・・・・愛しています!!」
ちょっ!?いないときに告白するべきじゃないか。いや告白は控えてほしいんだけど。これは、心をかなり取り乱してしまう。
「あ、ありがとう冬雅。今日も大変に嬉しいよ」
「えへへ相思相愛だね、わたし達」
「冬雅おねえちゃん。本当は夫婦じゃないの?」
「ふぇ!?そ、その・・・」
「ち、違うよ。法律では無理で、いやそうじゃなくて夫婦ではないんだ」
確かにそう思ったことは何度もあったが、飛躍しすぎな発言に俺はしどろもどろになるで、冬雅は
赤くなってうつむき、お
「あはは、おもしろい!」
「私達は全然そうではないけど」
愉快だったようで、高笑いする彼女を見て俺も苦笑の混じり嘆息。
「夫婦・・・えへへ」
「・・・あ、あれ?おにいちゃん、冬雅おねえちゃんとは結婚とかするのですか?」
「はう!?」
「そ、それよりも箙瀬さん学校はどうしているんだい?」
話題を逸らそうと思考を急速度で巡らしていると学校が気になった。今はセーラー服ではなく
赤いセーターに白のミニスカートとロングパンツの温かい格好。
もしかしたら、学校に行っていないのではそう思った。
「・・・・・い、行きたくないんです」
さっきまで無邪気な笑みが電気が消えたように暗くなっていく。
「そうか・・・とりあえず今日は私が勉強とか教えるよ」
「勉強・・・よろしくお願いします」
数学は苦手だから文系なら教えられるけど、勉強ができると教えるのが上手くなるわけではないので
正直に言えば力不足で申し訳ないと思うが教えないわけには
いかないし。それよりも明るく返事すると思ったけど駄目か。
「うわぁ、もうこんな時間」
冬雅が朝のニュース番組の時刻表示を横目で見ていつもの登校時間より遅かったことに慌てて立ち上がる。
「私も気づかなかった!」
俺も立ち上がり玄関まで冬雅に急ぎ足で玄関まで送る。ドアを開けた冬雅は「行ってきます!」とそれだけ言って走る。
「行ってらっしゃい」
俺はドアノブを握り冬雅を見送りの言葉を背中に向けて言う。
姿が見えなくなった所で
「わたしと二人きりですね」
「あ、ああ!そうだね箙瀬さん」
「わたしの事は比翼で言いですよおにいちゃん」
「そうか、比翼」
「なんでしょうか?」
「早速だけど勉強をしようか」
俺は三好さんの父親にバイトの長期休暇を許可をもらい勉強とメンタルケアもどきをすることにした。それから数時間が経って冬雅と真奈が家に訪ねてきて玄関ドアを開けて居間に連れていくと――
「うぅぅ、あぅぅ」
プレステ4のコントローラーを持ち比翼は炬燵に座って号泣していた。
「な、何ていうかシュールだね。お兄ちゃん」
「そうだね。比翼は感受性が高いからすぐに感涙にむせぶんだよ」
「お兄さん・・・冬雅に告白しておいて新しい女の子といるのって
どうなんですか?」
冬雅が珍しく苦笑していて、俺は打ち解けてくれた比翼に嬉しくなっていると冬雅の親友は俺に不満をぶつける。前に告白して俺が断ってから
「あっ、おかえり冬雅おねえちゃん・・・・・お、おにいちゃんの彼女ですか?」
比翼は帰った冬雅に懐っこい言葉を明るく言って視線を真奈と俺の交互を見てそう結論したようだり
「か、彼女ないから!」
真奈は初対面だろうがツンデレを遺憾なく発揮する。さすマナ。
「じゃあ手を繋いでいるのは?」
「こ、これは・・・お兄さんが寂しいって駄々をこねるかは仕方なく」
「真奈、それは
「ご、ごめん。お兄さん」
正直、真奈と手を繋ぐのは落ち着くし和むのでこれからも続けたいと思っている。かなり危険だと自覚している。
「そう。冬雅おねえちゃん、気になったのだけど」
コントローラーを炬燵の上に置き
冬雅の前に歩き向かう比翼。
「何かな比翼?」
「おにいちゃんが俺だったり私だったりで理由を訊いてもよく分からなくて教えて冬雅おねえちゃん」
冬雅の胸の前で顔を埋めるようギュッとハグする比翼。身長がほとんど変わりないので比翼は少し
屈んだ状態。冬雅は頭を
「それはねぇ、お兄ちゃんは嬉しいときや悲しいときに俺という一人称を使うんだよ。普段は私って言ってしまうらしいよ」
「えへへ、よく分かったよ冬雅おねえちゃん」
「どういたしまして」
こうして傍観すると本当の姉妹に見えてしまう。比翼は本来はかなり甘えたがりかもしれないなぁ。
もっともあの頃の年は普通だろうけど。
「お兄さん。あのゲームって
戦国無双4
複雑そうにする真奈。まだ恋心は残っているからこその表情だと分かった。
「ああ。比翼はほとんど知らない事が多いんだ。だから歴史の勉強ことで好きになってもらおうと
思ってゲームしていたんだ」
歴史が苦手の人ってどうしても暗記しようとするけど、実体験的な味わないと覚えるのは難しい。
本当に感じているように、どういう気持ちだったかを想像の翼を広げないと効果は激的に変化する。
歴史は暗記ではなく、自由に想像するもの。自然にやろうするなら
ゲームや時代劇がいい。
「勉強?お兄さんの知りあいの女の子ですか」
「知り合いっていうか、昨夜に出会った」
「それって昨日の女の子を二人きりでいたことですよね」
ジトッ批判的な目で見てくる。
真奈がそんな攻撃的な目をすると
怖いんだなぁと新しい一面を見た。
「そ、そうなるね」
「馬鹿ですかお兄さんは。
えーと、少しいいかな?」
真奈は冬雅にハグされ続けている比翼にスマイルを向ける。
比翼は肩を震わせ頷く。
「単刀直入に言わせて貰うわ。
の前にこたつに入ろう。
凍える寒さだし」
「そうだね。わたしと真奈は手を洗いにいくから、こたつで待っていてね」
「う、うん」
冬雅は比翼を優しい笑みを浮かべる。比翼は冬雅の言葉に小さく頷く。冬雅と真奈が洗面所から出て炬燵に入ると話しは再開する。
「お待たせ。その前に、ワタシは平野真奈。あなたは?」
「わたしは箙瀬比翼と言います。
比翼と呼んでください」
「ええ、分かった。ワタシも真奈って呼んでねぇ。閑話休題ことで続けさせてもらうけど、比翼は
家出をしているの?」
「は、はい」
恐る恐ると頷く比翼。真奈はあごを手で触れて考察する中で冬雅は比翼に真っ直ぐな目を向ける。
「えーと、母親に虐待の他には?」
「・・・あ、ありますけど
言いたくありません」
「うん」
冬雅は追求などしない。人には言いたくない事がある。それを
「少しいいかな。比翼はこれからお兄さんと冬雅に
「は、はい」
真奈の真剣な表情に怖じ気つく比翼はなんとか肯定する。
「それじゃあ理由を聞く資格はあるよね。そうじゃないと納得できないし不誠実だよ」
真奈は追求する。優しい真奈らしくないわけではない。俺と冬雅を考えての発言だてことは理解している。比翼はそっぽを向く。
「わ、わたしは――」
俺と冬雅、真奈は比翼の言葉を紡ぐまで根気よく待つ。そして細々とした声で事情を説明が始まる。
「再婚相手の男の人に、その胸を急に触られたんです」
「っ――!?」
強い衝撃に頭が起きたような言葉だった。その行いに怒りを覚え、どうしようもない悲哀を味わう。
「む、無理矢理それ以上もやられました。泣いても叫んでも・・・
です」
「・・・・母親は止めなかったの?」
悲痛な表情する真奈は挙手して
質問する。比翼は寂しげに微笑。
「無いですね。母親はわたしを
邪魔だっていつも言っています」
「そ、そんな」
真奈はそんな罵声と悪意を向ける母親がいるのか信じれない表情だった。
「・・・続けますね」
「ごめん。ワタシが訊いたことだけど、ツライならもういいよ。
無理しなくても」
真奈はあまりにも酷い現実に涙を流し頬が伝っていく。これ以上の話しは比翼に良くないと思っているはずだと思う。
「ううん。ここからはすぐに終われるので・・・逃げた、わたしは
熊本からここ東京まで知らない人に泊めてもらいました。
・・・身体を使って」
その意味することは想像難くない。普通に手を差し伸べる者はいなかったのか。苦しんでいる子供を利用して捨てて・・・・・ここまで
知らない誰かに強い憎悪と怒りがあふれていく。そんな暗い情でいると静かに聞いていた冬雅が立ち上がる。
「ひどいよそんなの」
「冬雅おねえちゃん?」
「ひよぉぉぉぉ!!」
炬燵に座る比翼の後頭部に抱きしめる冬雅。
「守るから。絶対にわたしが守ってあげるから!」
「冬雅おねえちゃん・・・ツラかったです・・・・・ずっと、
うっわあぁぁぁぁーー!!」
二人は泣き叫ぶ。冬雅の優しきに触れて比翼は苦しかったと助けてほしかったと外に出して叫び続ける。落ち着いた冬雅は、泣き叫ぶ比翼の頭を優しく
「スゥー、スゥー」
「えへへ、かわいいですね」
比翼は泣き疲れ冬雅の膝枕で気持ちよさそうに寝ている。
あらゆる苦しいから解放された疲れも取ろうとしているようにも見えて思えてくる。
「ああ、やっと年相応な反応を見たよ」
朝から夜までクイズやゲームと普通にノートを渡して勉強を勧めたりもしたけど、何かと無理しているようだった。
「そうなんですね。そろそろ遅いですしお兄ちゃんは真奈と見送りというデートに行かないと」
「ち、違う!デートじゃないわよ。それよりもこの子には
ごめんって伝えて」
真奈が罪の意識で苛まれた悲観な顔で比翼を見る。まったく、どうして無性に優しいのに、そんな追い込むような質問なんてしなくていいのに。本来は俺がするべき役目で2度と真奈がしなうように率先せねば。
「それじゃあ、真奈とデートに行ってくるよ冬雅」
俺はこれ以上の暗いを上書きさせる方法をしている。まぁ、褒めたやり方じゃない。ときめかせること。真奈の手を
「お、お兄さん・・・友達と言ったくせにデートなんて見境ないにもほどがあるよ」
で、できたら心の中で呟いてほしかった。聞こえてしまい鼓動が高まる俺は真奈を送りに外に出る。
手を繋ぎ街灯と家の灯りと後は店や車の明りかな。そんな
どうしようか。他人が救えるなんてかなり限られているし、
未来のことや幸せとかも。
「お兄さん言い忘れましたけど
今日はクリスマスイブですね」
「そう言えばそうだね」
クリスマスの装飾された家を見て思い出した真奈が話題を見つけ話を振ったと推測する。
クリスマスイブのイブはイブニング。最初は冬雅だと思っていたけど、それも悪くない。
「それで、お兄さん。た、たまにはこんな事をしてもいいですよね」
手を離した真奈は、俺の腕に抱きついて・・・って、えぇーーー!?
「ま、真奈!?」
「クリスマスイブは友達でもはしゃぐんです。だ、だから恋人みたいな距離もおかしくないから!」
「そ、それはそうなのかな?」
なんだか強く言われたらそんな気もしてくる。真奈は顔を腕に預けてかなり密着してくる。
その、冬雅や比翼よりも膨らみを感じるのでドキマギする。
真奈に抱きついたまま俺はぎこちない足取りで進むしかなかった。
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