6章

第51話 夏休み 8月その1 水着

 8月上旬のこと。

 僕は思った。夏休みが入ってからというもの、たいして夏休みらしいことをしていないことに。そして、また思う(こっちが重要)。璃月の水着は見たい‼、と。

 けど、海に行くと璃月の水着姿を他の人にも見られちゃうわけで・・・・・。

 そんな独占欲が溢れる僕の悩みを1人で抱えていてもどうしようもないので、その独占したい本人――璃月に相談することにした。

 好きって感情というか、愛っていうか、性欲っていうか。

 どれが正しいのかはわからないけれど、こういうのも報連相が大事だと思う。就活の面接時にこの水着を独占したい話と絡めれば、しっかりと報連相ができるアピールになって採用が決まること待ったなしだ。

 心の中なので、誰にもツッコんでもらえないことに若干の悲しみを覚つつ。僕は璃月に相談を開始する。


「璃月の水着が見たいんだけど、他の人には見られたくないんだ。どうすればいいかな」

「うんうん、自分だけのものにしたいのか可愛いね、鳴瑠くん。私はもう君だけのものだよ、よしよし」


 コンビニ前でのこと。

 アイスを2人で食べてるおり、ふと思ったことを相談すると頭を撫でられた。しかも、ワガママを言った小っちゃい子をあやすような感じだった。母性でも感じたのだろうか。

 結論から言わせてもらえれば、母性を感じられるのも頭を撫でられるのも悪くはない。むしろ、好きだった。

 もはや、撫でられることに満足してきている僕は、相談と言えるほど思考回路が回ってはいなかった。僕とは違い何かを考えている璃月は「うーん」と斜め上を見て続ける。


「たしかに、私も鳴瑠くんの水着は見たいけど、他の人に見られるのは嫌かも。君の水着にみんなが欲情したら大変だし」


 たぶん、僕の水着姿にそこまでの価値はない。

 けれど、あえてそれを言うことはやめた。独占したい気持ちを璃月が持っていてくれることがうれしいからだった。


「でも、どうしようか。僕、璃月の水着みたい」

「私も鳴瑠くんの水着は見たいんだけど。うーん、そだ。鳴瑠くん。30分後に水着を持って私の家に集合しよ」

「いいけど?」

「私の家のお風呂に、水着で入るっていうのはどーか――「いいね‼」

「元気だなぁー、君は。よしよし」


 元気いっぱいなクイ気味の返事に、再び母性を感じたようで頭を撫でてくる璃月。

 お互い、撫でること、撫でられることに満足すると、いったん解散。それからすぐに集合した。で、璃月の部屋でのこと。


「で、璃月。どこで僕は着替えればいいかな?」

「私の前でいいじゃん。ちなみに、私は服を着たままで見るけど」

「え、興奮するんだけど、じゃなくて間違えた。さすがに恥ずかしいんだけど」


 さらりと流しちゃったけど、よくよく考えると璃月のさっきの提案、変態度高くない?

 素知らぬ顔で、彼女は返答する。


「最初のやつはさておいて。鳴瑠くんでも羞恥心てあるんだね」

「羞恥心があるからこそ、恥かしい行動をして気持ちよく感じるんだと思うんだよね」

「どMさんの真理を見た気がする。さすがとしかいいよーがない」

「で、どうしようか?」

「うーん、だとすると。私が出た後に、私の部屋で着替えてもいいんだけど、鳴瑠くんが裸になったって事実があると今日から眠れなくなっちゃうと思うんだよね・・・・・」

「さらりと言ってもね、自分の変態性は隠せないと思う」

「えっちくない」

「眠れなくなっちゃうのは困るね」


 さらりと流して、僕は返答。

 ほっぺをつねられるが、ご褒美だと受け取る。


「じゃ、脱衣所で着替えればいいよ。あ、私の下着とかは置いてないから、洗濯ものの中を漁ってもないよ?」

「璃月、僕がそんな変態に見える?」

「ここまでの言動、今日までの行いを見て変態だって言えなかったら私、病院行かないといけないと思うの」


 たしかにそうだった。

 日ごろの行いの大切さが身に染みる今日この頃。また1つ、立派な大人になれた気がした。


「む、たしかにそうだけど・・・・でもね、璃月」

「ん?」

「僕は璃月の下着に関しては、璃月が自分から恥じらいながらスカートをたくし上げて、見せてくれる方がいいかな。だから、物色したりなんて絶対にしないよ」

「すごい。変態さんな発言をしているのに、誠実な発言に聞こえる‼」


 ぱちぱちと手を叩いて璃月は称賛を送ってくれる。

 そんな彼女は「ま、無理やり見てこようとしても全然いいんだけど」と小さな声で呟く。本当に小さな声で普通の人ならば聞き逃してしまうほどの声量。

 たぶん、僕でなかったら聞き逃しちゃうね。

 無理やり見るかどうかは持ち帰って考えるとして、とりあえず着替えに行くことにした。あ、その前に。


「璃月、カメラとか仕掛けてないよね?」

「む、むぅー、なんで、なんで鳴瑠くんは、そゆーこと‼」


 ほっぺを可愛らしく膨らませる璃月。ほっぺをぷにぷにして、僕は空気を抜いてやる。ぷしゅー、と空気が抜ける中、小声で「その手があったか」なる発言が聞こえた気がした。ここは気のせいにしておく。

 そんなわけで、着替えが終わって、コンコンと脱衣所のドアがノックされる。正直、ノックせずに入ってきてラッキースケベを狙ってくると思っていたんだけどな。


「ラッキースケベは起きないから、入ってきていいよー」

「残念」


 と、言いながら璃月はドアを開ける。

 中に入ってきたのは、青色のビキニ――胸のところにフレアフリルが付いており、ワンポイントになっている。正直、そのフリルを手に取り、めくりたい衝動に駆られるが我慢する。

 また、下はパンツ以外にも中に何かを履いているのか、謎の黒い紐がウェストあたりにある。やっぱりそれを手に取りたくなる衝動に駆られるけど我慢した。

 ――を身に纏う可愛い璃月だった。一生見ていられる、否、見ていたい彼女の姿だった。僕はすぐに感想を言う。


「璃月、そのぉ・・・・とっても似合ってる。神として崇めたいくらいに」

「そ、そっか。崇めるのはやめて、恥かしい。それに、神様になったら君以外の人のものにもなっちゃうからやだ」

「そうだね」


 璃月を神にする計画は中止にした。

 それから彼女は僕の方をじろじろ見てくる。


「どーかした?」

「鳴瑠くんの水着姿も可愛いなー、似合ってるなぁーって」

「・・・・・そっか」


 めちゃくちゃ恥かしい。普段、水着なんて着ないし、褒められることの方が少ない。そのため、こうして褒められるとむず痒いものがあった。

 それにしても、家の中で水着とはなんとも違和感が半端なかった。

 そんなことを思っていると、璃月はテトテトこちらにやってきて、より近くで僕の体をマジマジとみてくる。見られてるのが嬉しい反面、ちょっと恥ずかしい。


「そーゆえば、鳴瑠くんって、ムダ毛ないねー、つるつるすべすべー」


 璃月は僕の肌を触ってくる。

 やばい、気持ちがいい。このままではお風呂場よくじょうで欲情したってネタをする前にえっちな気持ちになっちゃう・・・・ッ‼

 興奮を抑えて、ムダ毛がない理由を説明する。いつかは気づかれるかもしれないことなので、最初から言った方が得策だと判断した為だ。


「僕とお姉ちゃんにはロリ遺伝子があるだよ」

「う、うん。初めて聞いたよ、その遺伝子」

「お姉ちゃんは僕よりもその遺伝子が先祖返り的に色濃くでてるんだけど、僕もそれを少なからず持ってて、その影響でムダ毛がまつ毛より下に生えてないんだよ」


 お姉ちゃんのあらゆるところもそうなので確かな情報だった。どうして、お姉ちゃんのあらゆるところに毛が生えていないのか知っているのかは、残念なことに言えない。言わせないでほしい。


「へー、そうなんだー・・・・ん?」


 何か気になることでもあったのか、璃月は僕のある一点見つめ始めた。その箇所というのは僕の下半身、水着に隠れているところで。


「鳴瑠くん、やっぱり、水着脱いでみない?」

「脱がないよ!?そもそも璃月は、画面越しにみたじゃん」

「つけねは見てない。ないのかは確認してない」


 ここにきての新事実。

 別にいらない情報だった。だって、見られたことには変わらないからだ。


「じゃぁさ、水着に手、いれていい?」

「何言ってんの!?」

「ね、本体は触らないから」

「むぅぅ、恥かしいんだけど・・・・・」


 キラキラお目目で、僕にお願いしてくる璃月。

 そんな顔をされたら、断れるわけ・・・・・。

 涙目になりながら僕はこういうしかなかった。


「ぐす、少しだけだよ?」

「やったぁー‼」

「優しく、して」

「うん、優しく気持ちよくするぅ」


 僕の胸板とか、腕とかを触っていた璃月は「行くよ」と言いながら、その手を鼠蹊部へと近づけてくる。そして、水着を少し持ち上げると、その中へと入れて上下左右に数回さわさわしてくる。


「あ、ない。すべすべー‼」

「むぅ・・・・ぐすん」


 僕は唸ることしかできなかった。

 何やら楽しそうな璃月が見れただけでもよしとするべきか・・・・。


「ありがと。そして、ごめんね無理やりしちゃって。泣きそうになってる鳴瑠くんを見てたら、楽しくなってきちゃった」

「ぐす」

「あーもう、泣かないでよぉ」


 少し考えてから、顔を赤くする。

 水着の為か、首のほう、いや全体的に赤くなっているのがわかる。そして、そっぽを向いて恥かしそうに僕へと提案する。


「き、君も・・・・私の好きなとこ触ってもぉ、いいよぉ」

「え、触るぅ‼」

「うわーわかりやすいよぉー」


 一瞬で元気になる僕に璃月は、呆れ半分、嬉しさ半分といった表情をみせる。

 このときの僕は、既にどこを触るか決めていた。

 目を瞑り僕にその身をゆだねる璃月。僕はその彼女の触りたい部分に、手を近づけてゆき触った。その場所はもちろん――、


「あ、璃月のここ、とがってきてるね。気持ちいいの?」

「ん、うん・・・・ん、んん。もう少し優しくして」

「うん。もうちょっと優しくコネコネするね」

「そうしてぇ・・・・・――てっ待って」


 瞳のハイライトが消えた璃月は、僕に待ったをかけた。

 それにともない先ほどまで出していた甘い空気はどこかに消えてしまっている。


「んと、気持ちよくなかった?」

「気持ちいいし、好きなとこ触っていいよって言ったよ?」

「うん」

「それで触るのがなんでアホ毛なの?バカなの?いつも触ってんじゃん。しかも無断で。下手したらデート中、ずっと触ってることもあるじゃん」

「了承を貰って触ったことなかったし、水着のアホ毛を触りたかった」

「んー、むー、水着のアホ毛ってなに!?アホ毛、水着関係ない‼」


 なんかやるせない顔をする璃月。

 それから再び提案してきた。


「なんか、アホ毛じゃ、涙目の鳴瑠くんの鼠蹊部を触った罪は消えないと思うの」

「そうかな?」

「そうだよ」

「そんなことはないと思うけど。僕はけっこう満足してるし」

「私が納得しない。もう1か所まで許します」

「ほんとに!?やったー‼」


 そんなわけで、璃月は目を瞑ると、僕にその身をゆだねてくれる。信頼してくれていることが嬉しく思いながら、触りたい場所に手を向かわせる。で、僕は璃月の穴に指を突っ込んだ。


「あ、このくぼみ、そして穴がいいの?」

「な、なるくぅん・・・・・あんまり、ほじらないで」

「えー、それが気持ちいいんじゃん」

「お腹の中、ぐるぐるするぅよぉ」

「指先で穴の周りもつーつーするね」

「あぅ・・・・・ダメだよぉ・・・・・――て、待とうか、鳴瑠くん」

「え、なに?」

「どーして、アホ毛の次に触りたい場所がおへそなの?」


 僕が触っていたのは、璃月のおへそ。

 そこを選んだ理由なんてただ1つ。

 今だハイライトの消えた璃月に真意を伝えることにした。


「前に触ったのが忘れられなくって」

「はぁー・・・・もぉ、鳴瑠くんは鳴瑠くんなんだから」

「ん?」

「ん?」

「んーと、璃月は僕に触ってほしかったところでもあったの?」

「え、あぅー・・・・・とぉ・・・・そけ――言わせようとしないでよぉ!?」

「えー、理不尽に逆ギレする璃月も可愛い」

「何を言っても、そこにたどりつく、アブノーマル性癖で彼氏最強だよぉー」


 ハイライトを取り戻しながら璃月は叫んだ。

 そんなこんなで、僕たちはお風呂で遊ぶ。

 ちなみに、この水着お披露目イベントが、えっち展開のピークだった為「お風呂場よくじょうで欲情した」とは言えずに終わったのだった。

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