小鳥のさえずり

「ローレ、見てー、お花畑だよー」

「⋯⋯ああそうだな」


 やわらかい。


「あ、ローレローレ、ちょうちょ!」

「そうだな」


 やわらかい。やわわわ。


 ここはアルシャフネリーの北西に位置する、ブロッサムフォレスト。名前の通り、いたるところにお花が咲く森である。


「ところで貴様。何をしに来たかわかっているのか?」


 薄い金色のポニーテールを指で払い、少女は問い掛ける。

 彼女はローレライ。ゲルマニウムだ。


「ふぇ?」


 そしてもう一人。月白の三つ編みおさげを揺らし、振り返る。

 彼女はケイ。ケイ素。


「もっちろん、わかってるよー。お姫様を探すんだよね!」


 ふにーと笑う。やわらかい。やわやわ。


「分かっているならよし」


 厳しいようで甘い。それがローレライである。


「まさか気体じゃあるまいし、誰かが通れるような道だよね。でも、ここまで歩いてきたけど、誰も知らないって」


 誰も、というのは、すれ違った動物達。魔法という訳では無いのだが、柔らかい性格からか喋れるらしい。


「ふむ。ブロッサムフォレストは、身を潜めるにはあまりお勧めできないような場所ではあるな」


 きっと、見つからないようにしているはずだ。ならばあまり人が来ないような場所が望ましいだろう。且つ、人間の力でも行き来出来る場所でもある。


「そうだねー、人は多いわ、人が少ないところといっても険しいわで大変だ」

「だが仕事は仕事だ。しっかり探すぞ」


 決められたことはきちんとこなす。それがローレライである。




 そしてこちらはフィスプ南方のさえずりの森。キュオルとユキエが捜索中である。


「ここを探す必要があるのか?」

「念には念を、と言うでショウ?」


 それに、徒然なりたる元素ちゃんはたくさんいるのだ。そんな元素ちゃんの中には、むしろ進んで引き受ける者もいた。やつら、真面目にやりつつ手を抜くという器用な方法を心得ていたりするのである。


 とはいえ。さえずりの森は人通りも多いし、木の密度も低い。隠れられるような場所はほとんどないだろう。


「あんまりかからなそうだな、時間」


 もっと広く、隠れる場所がありそうな所を探している元素はさぞ大変だろうなあ、と完全他人事に考える。


 例えば、ミデレーリア南西の妖魔の森、ミデレーリア南東の精霊の森。そして、中心山岳部の南東側に広がる⋯⋯果実の森。

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