第二部第四話part1『疑惑の検証』
犬伏:長畑の家 犬伏の部屋 夜
犬伏です。今、室内のテレビでニュースを観ています。
何でもあたし達がジュリエッタに行っていたまさにその日に
六本木で30名もの半グレ連中の大捕物があったそう。
そのうち20人は大怪我をして病院に搬送されたとか・・・。
警察は半グレ同士の抗争とみて捜査しているそうです。
あたしは大急ぎで部屋を飛び出しました。
長畑:長畑の家 リビング 夜
長畑だ。今、東矢、日下さん達の三人でスマホでネットニュースを見ている。
俺たちがジュリエッタにいた当日、六本木で大騒ぎがあったらしい。
全く物騒な話だ。
「怖いわね・・・」
「ま、俺たちは巻き込まれなくてよかったな、錬ちゃん」
「ああ、そうだな」
犬伏がリビングに駆け込んできた。
「ねえねえ、皆、ニュース観た?! 凄いよね、びっくりしちゃったっ」
「ああ俺もだよ、犬伏。俺たち危機一髪だったな」
「ああ~生で観たかったな~~。SNSの書き込みだと、2人の人間が、30人相手に応戦してたらしいよ。
半グレ同士の抗争じゃなかったとか、銃声もあったとか、何とか、色々書いてあるよっ」
「あんた、ホントそういうの好きね・・・」
日下さんが若干呆れた調子で犬伏に言う。
「全くだ。ほっとけよ。もう終わった話だぜ、真希ちゃん」
「それはそうだけど、面白いじゃん。もっとネットで情報漁ってみようっと」
犬伏が鼻歌を歌いながら自分の部屋に戻っていった。
やれやれ・・・。
牧野:指野のマンション リビング 夜
牧野です。
今、美咲ちゃんの家に狩川さんと一緒に遊びに来ています。
丁度テレビのニュースを観ていました。
「怖い事件だね~~今時こんなことあるんだ~。なんかネットの噂だと、銃声もしたらしいよ。2人対30人だったとか」
狩川さんが能天気にそう言っています。
「全く・・・亜美奈はそういうのに目ざといんだから。もう私達には関係のないことじゃない」
「まあ、それもそうだけどさ~」
「ねえ、美咲ちゃん」
「何? 玉藻」
「今井大志のこと、聞いてもいい?」
「・・・いいわよ」
「今井大志って、何か格闘技とか、やってたの?」
私の質問に、美咲ちゃんが一回息を吐いてから答え始めました。
「空手、テコンドー、合気道。全部段持ちよ。でも一番の特技はプロレス技。彼、プロレス大好きだったからね」
「そうなんだ・・・」
「それがどうかしたの」
「いや、ただちょっと気になっただけ・・・」
「(かすかに首を傾げる指野)」
もしかして、この事件。今井大志が・・・でももう一人って・・・?。
蘭:網浜の自宅 蘭の部屋内 夜
蘭です。3U側に行った100人の内、残った90人全員に話を聞いてきました。
理由は「なんとなくここにいたい気分になったから」という、日下さんや長畑さんと同じ理由でした。
一体どういうことでしょう。
送り込んだ刺客の中で唯一帰ったアホネンさんにも話を聞いたところ、
自分はスマホを弄っていてライブはまともに観ていなかった、とのことです。
ライブをまともに観た面々が皆同じような事を言っている。
何かがおかしい・・・。
網浜:網浜の自宅 蘭の部屋 夜
アミリンです。
今、蘭が自分の机に座ってノートPCで 何か情報を懸命に漁っているようなので、ちょっと様子を見てみることにしました。
「可笑しいよ、ほぼ全員が約束を破って3Uに残るなんて、ふざけてる。
こうなったら、もう残った奴、全員ビンタしてやる!」
「落ち着いて、蘭。それで蘭、あんた今何やってるの?」
「ハッキングして当日の3Uのライブ映像を見てる」
「一体あんた何をやってるの?」
「どうしても、腑に落ちないんだよ。今凄くお手洗い行きたいけど、我慢してる」
「なんで? 行けばいいじゃない。お姉ちゃんが見とくよ」
「駄目、何故だろう。この椅子から離れたくない気分なんだ」
「何それ? あんた何してるの?」
「わかんない」
「ちょっと待って、映像を止めて。とりあえずトイレ行ってきな」
「嫌だ、ここに居たい」
「蘭?」
どうしたんだろう。蘭の様子がおかしい。
凜は蘭を押しのけて、ノートPCに映された映像を強制的に止めました。
すると、しばらくして、蘭は・・・。
「あれ、やばい、おもらししちゃう~~~~~」
とお手洗いに駆け込んで行きました。
一体何だっていうの、あの娘は? 変な子だね、全く。
部屋に戻ってきた蘭は、直に椅子に戻って映像を見ようとしました。
しかし・・・。
「おかしい」
「何?」
「あんなにお手洗いに行きたかったのに、なんでかここにいなきゃって気分におかされてた」
「どういうこと?」
「お姉ちゃん、この映像、ちょっとコマ送りしてみるね」
「コマ送り?」
蘭が編集ソフトを使って、当日の映像のコマ送りを始めました。すると、
「ちょっと待って、蘭」
「何?」
「このコマ、文字が入ってる」
「あっホントだ。何々・・ここに、留まれ? 何これ」
詳しくコマ送りしていくと、
なんと0.5秒おきにその文字がライブステージのバックに流れている映像に差し込まれていたのです。
「これは・・・一体・・・」
「お姉ちゃん、これ、サブリミナル刺激だよ」
「サブリミナル刺激?! 名前は聞いたことあるけど・・・」
「19世紀頃から欧州で研究されて、マーケティング業者が広告に使い始めたんだ。でも現在は効果を危険視されて、広告等での使用を禁止されてるんだよ!」
「なんだってっなんでそんなものがこのバック映像に?!」
「分かったよ。私がトイレに行きたくなくなった理由が。あのあらくれクラブの店長、仕込みやがったな~~~不正だ! これは不正だよ!! お姉ちゃん、この勝負は無効だよ。あの男、こんな方法で客を繋ぎとめていたんだからっ」
「蘭、落ち着いて。あんたは動かなくていい。この件は刑事のお姉ちゃんが詳しく関係者から事情を聞いてみるよ」
「この効果は危険なんだよ!」
「危険って・・・例えばだけど、人を殺せたりとかはするの?」
「流石にそれは無いと思うけど、気分を害したり、精神に異常をきたしたり、人体に危害を加えちゃったりとかはあるかもね」
「え?」
「え? じゃないよっあのクソ男をぶん殴って、何でもいいから理由をつけて逮捕して!! っお姉ちゃん!!」
サブリミナル・・・使い方次第で・・・人体に危害を加える?
・・・・まさか・・・そんなことがあるわけ・でも・・・いや、止めよう。こんな推理は馬鹿げてる。。。
網浜:3U店内 スタッフルーム 昼
アミリンです。さっそく翌日3Uのスタッフルームにお邪魔して、今井警部に会いました。
ところが、警部のとても綺麗な顔は、痣だらけでした。
「今井警部、一体どうしたんですか? その顔はっ」
「ちょっと色々あってね。気にするな。ところで何の用だ?」
凜は警部にサブリミナルのことを話しました。
「サブリミナルだと?」
「警部が仕込んだんですか?」
「馬鹿な事を言うんじゃない。悪いが、ライブの日、俺は緊急の用事が出来て店を離れていたんだ」
「では顔のキズはそのときに」
「ああ、まあな。」
「じゃあ一体誰が?」
「当日の舞台設定は音響スタッフに任せてあったはずだ」
網浜:3U設備室 昼
アミリンです。
当日のライブの音響を担当していたスタッフに今井さんと突撃していきました。
「え? バック映像?」
「はい。映像を作ったのは、あなたですか?」
「いいや、あれは小弦ちゃんが送ってきてくれたDVDをそのまま使用したんだけど。それが何か?」
「朝稲小弦がっ?!」
「一体どういうことだ!」
「そんなこと、僕に聞かれても困りますよ。これを使ってって手紙に書いてあったんですから~」
封書・・DVD・・・手紙付き??
何だか不穏な予感がしてきた・・・。
「今井さんっ」
「ああ、わかってる。」
「(うなづく網浜)」
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