第五話Part9『風邪引いてまんねん』

長畑:長畑の家、321号室 リビング 朝


長畑だ。今日はハロウィンの当日なのだが、風邪を引いてしまった。

今日は一日静養しようと思う。


「大丈夫、無理だけはしちゃ駄目よ」

「ありがとうルリさん。」

「れん坊のいないハロウィンなんてあんこの入ってないアンパンだわ」

「ごめん真希ちゃん、ちょっと意味がわからない」


俺達が話していると、玄関をノックする音が聞こえた。一体だれだろう。


「きゃあ、牧野ちゃん、カッコいい!!」


玄関から犬伏の叫ぶ声がする。


「今日はこの格好で一日楽しもうと思ってます」

「いいよ、すごくいいよ」


牧野さんが犬伏に誘導されリビングにやってきた。

男っぽい髪型に着流し。そして何故か刀を帯刀している。


「テーマは素浪人です。これで悪を切りさばきます」

「へえ、やるじゃない。」

「メッチャカッコいい。一緒に写真撮ってもいい」

「はい」


犬伏は牧野さんと一緒にツーショット写真を撮り始めた。

どうやら俺の風邪は忘れられてしまったらしい。でも、ま、いっか。


「それじゃあ、みんな、楽しんでこいよ。俺ッちは行かないから」

「あら、東矢君は不参加なの」


「ああ、ちょっと別の用事が出来てな」

「そう、残念ね」

「ばいば~い」


 東矢にはあっさりしているな、犬伏は。。。


「長畑さんは?」


牧野さんが俺の名前を出してきた。


「彼は風邪を引いちゃって、急遽不参加」


「えー大変じゃないですか。誰か看病してあげないと」

「大丈夫よ、ただの風邪だし、寝てれば治るよ」

「それは駄目です。私がギリギリまで介抱します」


「あら、牧野さん、いいの?」

「無理しなくていいよ、風邪うつっちゃうし」


「いいえ、私に介抱させて下さい」


牧野さん、一体何を考えているんだ。まさか、俺を殺すつもりじゃあ・・・。


「じゃあお願いするわね。行くわよ、真希、東矢君」

「オッケー」

「じゃあ現場でね、牧野ちゃん」

「はい」


こうして、俺と牧野さんは二人きりになった。


牧野さんはさっそく「おかゆ作りますね」と言って台所に向かった。


網浜:網浜の家 リビング 昼


アミリンでっす。

今大変なことになってます。

妹の蘭がぐずっているのです。



「もうしょうがないでしょう。お姉ちゃんだって蘭と過ごしたかったよ」

「そんなこと言って、私の心を弄ぶんだ」

「お姉ちゃんは仕事も兼ねてるの」

「じゃあ私も連れてって」

「未成年を連れて行けないよ」

「牧野さんだって未成年じゃん!!」

「牧野さんはもう18歳だから」

「私と一歳しか違わないでしょう!! やだやだやだやだねばねばねばーーー!」」

「もうまったくしょうがない妹だね。」

「悪いのはお姉ちゃんだよ。私は被害者だ」

「大げさなこと言わないの」

「どうせ牧野さんなんでしょう」

「え?」

「牧野さんと一緒に楽しくハロウィンを過ごすんでしょう」

「蘭にだって久原ちゃんや徳子ちゃんや夢乃ちゃんがいるじゃない」

「久原はライバル、徳子は犯罪者、夢乃はペットだよ。友達なんて私にはいないんだよっ

私にはお姉ちゃんが全てなの、わかってよ」

「はいはいわかりました。じゃあ少し早めに帰ってくるから、そしたら二人でハロウィンやろう」

「ホント、それならいいよ」


 やれやれ。



長畑:長畑の家、321号室 長畑の部屋 昼


長畑だ。風邪を引いてボーっとしている。

今は天井を見つめている。


コンコンとドアをノックする音がしたので、「どうぞ」と声を上げた。

牧野さんがお粥を持ってやってきた。


「卵入れときましたから」

「ああ、ありがとう」


さっそく俺は牧野さんからトレイ越しにお粥を受け取った。


「私が食べさせてあげますね」


「え、いいよ。一人で食べれる」


「無理は禁物ですよ」


そう言って、牧野さんはお粥を自分の膝の上において、蓮華で大量のお粥をすくってきた。

とてもこんもりとしていて、一口では食べきれない量だ。


「さ、食べてください」

「いや、ちょっと、量が多すぎるかな」

「私の作ったものが食べられないというのですか?」

「いや、そういうわけじゃないけど」

「じゃあ食べてください。お粥はお腹にも優しいんですよ」

「うう・・・」

「さあほら、男ならグイッと」

「いや、だから一口の量が多すぎるって、熱っ熱っ」

「食べなさああああああああああっい」

「ひいいい~~」


結局、あつあつのお粥を大量に食わせられる羽目になってしまった。

これは新手の拷問か。牧野さん、メッチャ楽しそうだった。彼女はSだな。

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