第1話Part9『出会いは唐突に』




牧野:自宅寿司屋前 朝


 東京へ向かう朝が来ました。荷物は先に送っておきました。東京までは新幹線で行きます。

 大事なベースだけは自分の手で持っていきます。

 私の見送りに父さんと魚雅お兄ちゃん、弟子の方々が店から出てきてくれました。

 「お嬢さん、辛くなったらいつでも帰ってきてくださいね」

 「ありがとう文太さん」

 「玉藻、東京でロックに生きてこいよ」

 「勿論だよ、兄貴」

 「玉藻、指野さんによろしくな」

 「うん、お父さん。じゃあ行って来るね」

 私はキャリーバックを持って、腕にはトートバックをかけて、

 背中にはベースを背負って家からバス停へ向かいました。


牧野:東京駅構内 昼

  

 東京にやって来ました。とてつもない人ごみです。秋田とは何もかもが違います。

 私がオロオロしていると、突然手にかけていたトートバックを何者かに奪われてしまいました。

 「あっこら」

 私が人ごみを避けながら必死で追いかけると、謎の女性が犯人を取り押さえてくれました。

 「うわ、どうもありがとうございます」

 「こちらこそ、気をつけてくださいね」

 「はい」

 私は丁寧に一礼してその場を後にし、待ち合わせ場所に向かいました。

 彼女こそ、後の私の親友になってくれる人、網浜凜ちゃんです。

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