幕間

 だから、これはしょうがないことなのだ。


 あのとき以上に発展することもなかった関係が、友達の枠組みを超えることなどあり得ないのだから、当然の結果なのだ。友達であって、恋人でもない――いや、そもそも友達といえるかどうかも怪しい関係だったのだから、文句も不満も、口にする権利なんてない。


 やめろ、なんて引き留めるなどなおさらのこと。


 いつだってそうだ。


 吐き出そうとするのを、時間は待ってくれない。


 それが分かっているのに、肝心なときに間に合わない。


 だから痛い目を見る。


 そんな境遇は小学校の頃から何一つとして変わっていない。


 そして、変えることもできなかった。



『アタシ、付き合うことにした』



 ホテルからの帰り道。


 虚無の日曜日を無益に布団の中で使い潰し、そうして日が変わる直前。


 エリナから簡素なメッセージを受け取った。


「……くそっ」


 真っ暗な部屋へと戻ってくるや否や、無情に送りつけられたメッセージに、雨宮は舌を打って、スマホをベッドに放り出す。


 その日ばかりは、返事の一つもできやしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る