魔王だけど魔法少女(きみ)になら負けてもいい

おきたくん@沖野聡大

序章 魔王様恋をしました。

桜がもう散り始めて五月に入り、入学式ふわふわしていたみんなが何となくまとまり始めるそんな時期。


「じゃあ、学級委員は桐ヶ谷くんと砂糖さんで決まりね。」


どうしてこうなったかなぁ。


いきなりだが、俺は魔王だ。そう確かに今はこうして当たり前のようによくある学校の教室で、みんなと同じ制服を着ているが俺は魔王だ。数ヶ月前から天使と契約した人間の女〝魔法少女〟の勢力が増し、その様子を探るよう父からの命令で人間界へ俺は降りた。...それだけのはずだった。父は俺の人間界への旅立ちを労う魔物たちみんなの前で退位そして俺の即位の発表をしやがった。そこからはトントン拍子だ。予定通り人間界には行かなくてはならないし、魔王にもなってしまった。


「やーったな桐ヶ谷!よっ俺たちの学級委員!!」


今は高校一年生の桐ヶ谷真人(きりがやまこと)としてここで暮らしている。その為こんな風に馬鹿そうな人間たちの相手もしなくてはならない。今日もいつもと同じように適当に返事をしていたら変な役職につかされてしまった。しかも話したことがないやつといっしょだ。


「砂糖さんといっしょだなんて羨ましいぜ。俺も砂糖さんいるって知ってたらな。」


そんな単純な理由でこんな役職を決めるだなんてやはり下等生物は...


「ん?」


その時ふんわりと嫌味のない程度の甘い香りが近付いてきた。薄桃色の髪が揺れていた。


「桐ヶ谷くん、だよね?わ、私は砂糖桃胡(さとうとうこ)よろしく!」


悪意の全く見えない軽く赤らんだ笑顔。

そう、それが一目惚れだったのだと気付くのは遅くなかった。

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