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 雛はいつもと同じ白いひらひらとした服を着ていた。

 夏も同じような白いワンピースを着ている。

 真っ白な部屋に、真っ白な服。

 雛は小さく体を左右に揺らしている。

 なにかが楽しくてしょうがないという、子供特有のわくわくした目をしている。

 雛はきちんと生きていた。

 ここにいる雛は人形ではなかった。

 そんな雛を見て、夏はとても新鮮な気持ちになった。

 夏はじっと照子を見つめる。

 雛もじっと夏を見つめる。

 そんな時間がしばらくの間、続いた。

 そして、我慢しきれなくなったのは、(やっぱり)雛のほうだった。

 雛が小さく足を一歩だけ、前に踏み出した。

 ぺたっという雛の足音が夏に聞こえる。

「重力の重い星では、子供はうまく成長できない」雛はとても綺麗な声でそう呟いた。

「重力の重い星では、子供はうまく成長できない」夏は雛の言葉を繰り返した。

 夏の声を聞いて、雛が笑う。

「初めまして。瀬戸夏さん。私は木戸雛と言います」雛が明るい声でそう言った。

 初めまして? と、夏は疑問に思う。

 夏と雛が会うことは今が初めてではない。こうして言葉をかわすことが初めましてということだろうか? それとも、夢の中で出会うことが、初めまして、ということなのだろうか? 

「初めまして、木戸雛さん。私は瀬戸夏と言います」と夏は雛に返事をした。

「はい。もう知ってます」と雛は言って、(なんだか、すごく可笑しそうに)くすくすと、小さく笑った。

 夢の中の木戸雛はとても明るい女の子だった。

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