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「遥はさ、どうしてあの学園に通うことにしたの?」

 夏が言う。

「友達が欲しかったから」

 遥が答える。

 夏は自分がいるから、という答えを求めていた。遥の答えは、夏の理想に限りなく近かった。

「馬鹿だな、遥は。友達ならさ、もう私がいるじゃない」

 そう笑顔で夏が言う。

「うん。そうだね」

 遥が言う。

 それから二人はお皿を片付けて、食後のコーヒーを淹れて、それから夏と遥はコーヒーを飲みながら、たくさん、たくさんお話をした。話の内容はあってないようなことばかりだった。そこに重要な秘密はなにも隠されていない。ただ空気の中に消えていくだけの言葉たち。その羅列。

 それでも、夏は嬉しかった。その証拠に夏はずっと笑顔だった。

 作り物ではない、本物の瀬戸夏の笑顔がそこには浮かんでいた。

 コーヒーポットの中身が空っぽになったところで、二人は会話を中断した。

「少し、話疲れちゃったね」遥が言った。

「うん。ちょっとだけね」と夏が言った。

 それから二人は遥の寝室でゆったりとした午睡をすることにした。それを提案したのは遥だった。夏は遥の提案を受け入れて、二人は手をつないだまま、遥の寝室まで移動した。

「おやすみなさい」

「うん。おやすみ」

 二人はベットの上で目を閉じた。

 空調の効いた寝室の中。

 心地よいランニングの疲労と、お風呂上がりの火照りと、ちょうど良い食事が、夏に安眠をもたらしてくれた。

 夏はすぐに眠りに落ちた。

 まだ目覚めてから半日も経っていないのに、あれだけ長い時間眠っていたはずなのに、全然寝足りないくらいだった。深い眠りと、長い時間。

 夏は眠りの中で、久しぶりに夢を見た。

 その夢の中で、夏は、木戸雛と再会をした。

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