26
部屋の中に木戸雛はいた。
遥とこの部屋を訪れたときと同じ姿勢のままで、雛は真っ白な部屋の中の真っ白な椅子の上に静かに座っていた。ガラスの壁のこちら側と向こう側。
夏は雛の眼の前まで移動する。
そこで拳銃から弾倉を外して弾丸の数を確認する。
この拳銃の最大装填数は六発。
でも、実際に装填されてい弾丸の数は二発。
それは先程拳銃のチェックをしたときと同じ数だった。弾丸は一発も抜かれていない。引き金を引けば、ちゃんと発射される位置にある。
拳銃と同じ色に輝く銀色の弾丸が美しい。
この弾丸なら、きっと悪魔だって殺せるはずだ。
弾倉を装着し直して、そっと銃口を雛に向ける。
雛は相変わらずどこか空中の一点を見つめている。だけど、この距離で、この角度で、この銃口が見えていないわけじゃない。弾倉を装填する音だって、ちゃんと雛に聞こえるように意識してわざと大きめに鳴らしたはずだ。
しかしガラス越しの雛は微動だにしない。
まるでこの状況を理解できていないようだ。
もしかしてこのガラスの壁は防音が完璧なのだろうか? 音は壁を通り抜けられないのかもしれない。ううん。音だけじゃない。もしかしたら視界もないのかもしれない。このガラスの壁はマジックミラーになっていて、向こう側からはただの鏡として見えるのかもしれない。
ありえない話じゃない。
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