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「夏、ここ、座って」
エレベーター施設の背後にある小高い丘の上に遥はいる。夏は言われた通りにその場所まで移動してそこに座り込んだ。そこには短い草の生い茂っているが、汚れはまったく気にしなくていい。
ドームの中は完全に無菌であり、ここにある土も草も風も、そのすべてが偽物だからだ。
だから汚れは気にしない。
むしろ汚れているのは生きている夏や遥のほうだった。
二人は丸い電灯の光の中で並んで体育座りをした。
遥は真っ暗な空を見上げている。
夏は自分たちの足の先っぽを見つめていた。そこには四本の足とお揃いの二足の白い靴があった。その靴は夏の私物ではない。夏の少し底のすり減ったお気に入りのスニーカーは、ドームの入り口にある金庫のような小さな箱の中に今も保管されているはずだった。
「ねえ、夏。私たちが初めて出会ったときのこと、今も覚えてる?」
遥が言う。
「うん。覚えてるよ」
忘れるわけがない。
「ちょうど今頃だよね。七年前の夏の七歳のお誕生日会。七月の七日。なんだか、七ばっかりだね」
「うん」
「夏が私に、声をかけてくれたんだよね」
「うん」
「あのときは、嬉しかったな」その言葉を聞いて夏は遥のほうを見た。遥はまだ、空を見ている。
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