第61話 油断

3人でマンション内の菜々の家に入り、リビングに向かった。

3人が座ると、菜々はカバンの中から再び小さい瓶を取り出し、机の上に置いた。


「これが私の作って来た最高傑作よ!!」

「最高傑作ね、それで何ができるのかしら?」

「この薬を使えば、体の中で分裂してしまった記憶や精神をまとめて一つに統一して体に戻すことができるわ」

「それは確かにすごいのだけれど、ほかの病気にも使えるんじゃ・・・」

「え?今回マキちゃんの為だけに作ったんだから公表はしないわよ?レシピもないし」


菜々はキョトンとした顔でそう言った。菜々は昔からこういうところがある。

好きなことを優先しすぎるとそのほかのものが見えなくなり、全てがおろそかになる。

今回も調合の計算をせず、ひたすらやって作っていたのだろう。


「あんたって馬鹿なのか天才なのか本当に分からないわ」

「でも、これにも副作用があってね一週間眠り続けちゃうんだ」

「一週間、普通に長いわね」

「でも、目が覚めたら昔のマキちゃんに元通り!」

「結構リスクが高いわね」

「でも効果は保証するよ」

「・・・そうね、それじゃあ早速使いましょうか」

「わかったわ。じゃあこれを水に溶かして」


菜々が置いてあった瓶を取ろうとした瞬間、再び外から弾丸が発射された。

その弾丸は窓を突き破り、瓶に命中した。

瓶は一瞬にして砕け散り、中に入っていた液体も全てこぼれ落ちてしまった。


「そ、そんな・・・」

「家の中なら大丈夫だって完全に油断していたわ・・・」


マンションからおよそ5km先のビルの屋上で女が携帯を取り出し、電話をかけ始めた。


「成功しましたよ」

「ご苦労様、お金はいつものところに振り込んでおくからもう帰っていいわよ」

「はい」

「また頼むわね、マリ」

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