てんと
「いやーアライさんこの「てんと」っていうおたからは、
アライさんが見つけたもののなかでも格別にいいねぇ」
「えっへんなのだ、でもちょっとそれは違うのだ」
「何がなのさー」
「アライさんがじゃなくて、アライさんとフェネックが見つけたおたからなのだ」
「あははー、それもそうだねーわたしがいなきゃ、
手に入れられたか怪しいもんだったものねー」
「ぐぬぅ、フェネックの言う通りなのだ」
「それにしても今日は何の成果もなかったのでちょっと疲れたのだ」
「そうだねー、わたしも眠いしもう寝よっかー」
額を突き合わせて眠りにつく二人、
しばらくしたのちかすかな光が二人の間に灯る。
「んー、ここはどこだろう真っ暗だねぇ、
お日様もないのに自分の体が見えるなんて不思議…ってあれ!
この手、いや前足?けものの足だ…フレンズの体じゃなくなってる…」
そのとき、フェネックは前方に大きな明るい影を見つける。
「わぁー、ここはどこなのだ?フェネックー!」
「その声、アライさん!?」
「フェネック、そこにいたのかー?」
駆け寄ってくるアライさんの影、その姿を見たフェネックは思わず逃げ出す。
「フェネック?どうして逃げるのだ?ってその姿、フェネックなのか?」
「いやー、アライさん、なんだよね?ちょっと大きくて怖いかなぁって。
どうやらわたしたちセルリアンに食べられたわけでもないのに、
けものの姿になっちゃったみたいだねー」
「ふぇー、どういうことなのだ。
フェネック、怖がらないで欲しいのだ、
アライさんフェネックのこと襲ったりしないのだ」
「お互い、記憶はしっかりしているみたいだね…」
ゆっくりと近づくアライさん、怖い気持ちを抑えて踏みとどまるフェネック。
アライさんがフェネックの頭をやさしくなめる。
フェネックの毛が逆立って大きなしっぽがさらに太くなる。
次第に落ち着きを取り戻していくフェネック。
「いやー、恥ずかしい姿を見られちゃったねー。
それがアライさんのけものの姿なんだね、初めて見たよー。
やっぱりそれなりに大きいんだねぇ」
「フェネックは小さくてかわいいのだ、やっぱりお耳も大きいのだ」
けものの姿で打ち解けた二匹、
フレンズの時分ではおぼろげだったけものの頃の記憶が比較的鮮明に思い出せる。
お互いけものの頃の話に花が咲く。
特にアライさんの人が使っていたという大きな石造りの建物や地下通路の話は
知識欲旺盛なフェネックの興味を大きくひいたようだ。
そして、いつしかアライさんの大きなお腹の横でフェネックは丸くなって眠った。
「うーん、もう朝かー」
「むにゃむにゃ…フェネックー」
思わず吹き出すフェネック、その笑い声で目覚めるアライさん。
「むー、フェネックはもう起きていたのかー、おはようさんなのだ」
「おはよう、アライさん。変な夢を見たよー」
「アライさんもなのだ!フェネックがな、小さかったのだ!」
「えっ…それって、二人して同じ夢を見ていたってこと!?
アライさん、とっても大きかったよー。不思議なこともあるもんだねぇ」
「アライさん、てんとよりすごいお宝を見つけたのだ、いや見つけていたのだ」
「それって…」
「フェネックに逃げられたときはアライさんとても悲しかったのだ。
これからもずっと一緒にいて欲しいのだ。
フェネックがたから探しをやめたいというのならアライさんそれだってやめるのだ」
クスクスと笑うフェネック。
「アライさーん、らしくないこと言わないでよー。
おたから探しをしないアライさんなんて、それアライさんなのかなー?
ひょっとして寝ている間に中身が入れ替わっちゃったのかな?」
「むぅー、フェネックはいつも通りのまぎれもないフェネックなのだ」
「さて、アライさん今日はどこを探しに行くのー、
てんとも片付けてばすてきに載せないとねー」
「アライさんにおまかせなのだ!」
「また穴開けないでよーアライさん」
おしまい
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