汚隣の後輩ちゃん
ブリル・バーナード
第1章 一学期と後輩ちゃん
第1話 お隣の後輩ちゃん
ピンポーン!
俺の家のチャイムが鳴った。俺は高校生になって一人暮らしをしている。そのアパートでゆっくりまったりしていたところ誰かが訪問してきたようだ。
新聞勧誘だろうか。テレビの公共放送の関係者だろうか。それとも、宗教関係者だろうか。
俺は居留守を決め込んだ。
ピンポーン!
再び家のチャイムが鳴る。そして、扉をドンドン叩く音が聞こえて、扉の外から声が聞こえてきた。
「こんにちはー! 引っ越しの挨拶に来ましたー!」
何となく聞き覚えがある声の気がする。
そう言えば朝から隣がうるさかったな。少し前にお隣さんが引っ越していき、新しい人が入ってきたか。でも、面倒くさいので居留守をする。
またチャイムが鳴って、ドアを叩く音がする。
ピンポーン! ドンドンドン!
「中にいますよね! いい加減開けてください!」
俺は耳を疑った。あり得ない。あの人物の声が聞こえた気がする。でも、絶対にありえない。あいつが隣に引っ越してくるだと……。いや、あいつならやりかねない。
俺は仕方なく玄関の扉を開けた。
「やっぱりいるじゃないですか。こんにちは、せーんぱい!」
玄関の扉の先にいたのは俺の良く知る美少女だった。
俺は目を疑った。いくら目を擦っても消えてくれない。
目の前にいるのは、Tシャツとズボン姿でセミロングの髪をポニーテールにした少女。顔立ちは少し幼さを残した美少女。大きな瞳にパッチリ二重。睫毛は長く、ピンク色のプリっとした唇。肌はきめ細かく真っ白。胸は平均よりも大きそう。将来美人になりそうな美少女だ。
彼女が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「隣に引っ越してきた
目の前にいるのは俺の良く知る山田葉月。彼女は俺の中学校の後輩で妹の親友だ。彼女は何かと俺に絡んでくる。
「何の用だ後輩ちゃん。俺は何も聞いていないぞ」
「先輩を驚かせようと関係者に口止めをしておきました。驚きましたか?」
「夢かと思ったな。本当に隣に引っ越してきたのか?」
「はい! というわけで、引っ越しの挨拶です」
後輩ちゃんが後ろに回していた手を前に出す。何やら白い箱を持っている。
「先輩! 引っ越し蕎麦ではなくて、引っ越しケーキです。一緒に食べませんか?」
「断る」
俺は意地悪してドアを閉め始める。急に俺の隣に引っ越してきた罰だ。後輩ちゃんは見るからに狼狽え慌て始める。
「えっ! ちょっと! 何ドアを閉めてるんですか! 久しぶりなんですからお喋りしましょうよ! ねぇ先輩! せんぱーい!」
一旦俺は全部ドアを閉めたところですぐに開けた。後輩ちゃんは涙目で今にも泣きそうだ。少しは仕返しができたか?
「冗談だ。急に来たから意地悪したくなった」
「もう! 先輩に嫌われたかと思ったじゃないですか!」
「すまんすまん! 汚いところだけど上がってくれ」
後輩ちゃんが、お邪魔しまーす、と声をかけて俺の部屋に入っていく。
掃除もしているし、急な来訪があっても大丈夫にはしている。俺はお茶を用意する。
後輩ちゃんはテーブルにケーキの箱を置いている。そして、キョロキョロと部屋の中を見渡していた。
「綺麗にしていますね」
「まぁ、この間大掃除したばかりだからな」
「ふぅ~ん。女の気配もありませんね」
「あるわけないだろ。彼女とかいないし」
そうですかそうですか、と後輩ちゃんが喜んでいる。俺が彼女を作らないことくらい知っているだろうに。
お茶の準備ができたのでコップを持って後輩ちゃんの隣に座る。
「ケーキを食べる前にこれをどうぞ」
後輩ちゃんが手紙を手渡してきた。何だこれは。
「父と母からの手紙です」
後輩ちゃんの両親からの手紙?
俺と彼女の両親とは面識があり、仲良くさせていただいている。でも、なぜ手紙を?
手紙を開けると二枚の便箋が入っていた。一枚目は後輩ちゃんの両親からだ。
葉月の母、
葉月の父、
追伸:葉月ちゃんは家事ができないからお世話をお願いね。
便せんに書かれていたのは、このたった三行だけである。いや、他にないんですかね。それに、家事ができないのによく一人暮らしを許可したな、あの人たちは。
もう一枚の便箋には………なぜか俺の家族からだ。
母、
父、
妹、
追伸:ガンバ!
俺は家族からの手紙を握りつぶした。クシャクシャに丸めてゴミ箱にポイする。何がガンバだ。何を頑張れって言うんだ。あいつらのことなんか俺は知らん。
「なんて書いてあったんですか?」
自分の家族からの手紙を読んで、少し顔が赤くなっている後輩ちゃんが問いかけてきた。
「知りたければ拾って見てみろ」
後輩ちゃんが四つん這いになってゴミ箱へ向かう。後輩ちゃんのお尻の形がよくわかるので俺は視線を逸らした。
クシャクシャに丸めてあった手紙を見て、後輩ちゃんが納得の表情を浮かべた。
「あぁ~。先輩ガンバ!」
「後輩ちゃんまで言うか!」
「いやー、ヘタレの先輩にはこう言うしかないじゃないですか」
後輩ちゃんが四つん這いになって戻ってきた。
本当に気をつけて欲しい。Tシャツの首元が開いて中が見えてるから。チラッと見えたのはピンク色の下着だった。
「というわけで、末永くよろしくお願いします」
「あーはいはい、よろしくな」
「むう! 何ですか、その棒読み口調は! 反応が面白くありません!」
「さーて、ケーキ食べるか」
「無視ですか! 無視なんですね!?」
後輩ちゃんが何やら言っていたが、俺は構わずケーキの箱を開ける。中にはチョコレートケーキとベイクドチーズケーキが入っていた。
「ふむ……これを見るに、後輩ちゃんが食べたいのを買ってきたな?」
「………………」
後輩ちゃんがムスッとした表情で俺を無言のまま睨んでくる。
「無視ですか」
「先に無視したのは先輩のほうです」
「ごめん、悪かったよ」
「ケーキを半分こするなら許してあげます」
最初からする気だったくせに。まぁ、それくらいで許してくれるなら安いもんだ。
「俺も両方食べてみたかったし、それで許してください」
「許します!」
後輩ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
俺たちはフォークでケーキを食べ始めた。俺が先に食べたのはチョコレートケーキだ。程よい甘さと苦みでとても美味しい。甘すぎるのが苦手な俺にはちょうどいい。
「チーズケーキ美味しいです! 先輩も気に入ると思いますよ! 先輩先輩! チョコレートケーキください!」
俺はチョコレートケーキの乗った皿を後輩ちゃんの前に置いた。何故か後輩ちゃんは不機嫌そうだ。そして、そのまま口を開いて固まる。
「………………あ~んをしろと?」
コクコクと後輩ちゃんが頷いた。なぜ付き合っていないのに恋人のような真似をしなければならないのか。
何を言ってもあ~んすることになるのだから、俺は潔く諦めてチョコレートケーキを後輩ちゃんにあ~んした。
後輩ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤くしながら美味しそうに頬を緩ませている。
「ふふふ。とっても美味しいです! 先輩があ~んしてくれたからですかね?」
「してもしなくても味は変わらないぞ」
「そうですか? では先輩もどうぞ」
後輩ちゃんがチーズケーキをあ~んしてくる。俺は顔が熱くなるのを感じながらパクっと口に咥えた。
なぜか、今まで食べたケーキの中で一番美味しく感じた。
「先輩、どうでしたか?」
「………………美味しかったです」
「そうですか! それでは、間接キスしたご感想は?」
おい。自爆戦術止めろよな。聞いた後で後悔するなら聞くなよ。爆発的に顔を赤らめたな。
「…………首まで真っ赤になってるぞ」
「…………うるさいです……それは先輩も同じですよ」
知ってる。体中が熱いから。俺は茹でたタコのように真っ赤になっているに違いない。
「それで? ご感想は?」
感想を聞くまで問い詰めるらしい。
「さ、さあなぁ? よくわからなかった」
俺ははぐらかした。だけど、次の後輩ちゃんの言葉で俺は凍り付いた。
「……もう一回しますか?」
「………………する」
俺もお年頃の男だ。美少女からの誘惑に逆らえなかった。
こうして俺たちはお互いにあ~んをした。お互い食べさせあって、気づいたらケーキが全部なくなっていた。俺が自分で食べたのは最初の一口だけ。後は全部後輩ちゃんに食べさせてもらいました。逆に俺は後輩ちゃんに食べさせたけど。
ちなみに、この日食べたチョコレートケーキとベイクドチーズケーキは今までで一番美味しかった。
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