第239話 腕の中へ
アシュリーを抱き締めたまま暫くそのままでいると、扉がノックされて、ゾランがやって来た。
「リドディルク様、アシュリーさんは……」
「ゾラン……お前は報告だけをすれば良い。」
「はいっ!申し訳ありません!まず、夢見の間の前で倒れていた者達ですが、ひとまず全員拘束しました。人形遣いウーログもです。」
「父上は……どうなった……?」
「以前見た時よりも、更に老いた感じがします……ご自分では動けない様で、上手く話す事も出来ない状態になっておられました。」
「そうか……」
「依頼を出したのは、ベルンバルト様でして……以前より、ランクを大幅に上げた冒険者やランクの高い冒険者を、依頼と称してオルギアン帝国まで来させていた様です。そうして能力の高い者を……アシュリーさんを探されておられたんでしょうね……」
「なぜそれが今まで分からなかった……っ!」
「情報が漏洩しないように、秘密裏に動いていた様です……依頼を出された者は記憶操作されている様でした。」
「やはり父上は……」
「依頼を出す様に言われた者はその事を忘れるので、辿って行くことが出来ませんでした。申し訳ありません……」
「分かった……」
「ベルンバルト様は自室で従者に見張らせております。拘束した者達は、未だ気を失ったままです。」
「今日は執務室には戻らん。カルレスにそう伝えておいてくれ。それから、エリアスにアシュリーを無事助け出した事を伝えて貰えるか?」
「畏まりました。それから浴場にあった、アシュリーさんの持ち物等は、後程持って来させます。」
ゾランが出て行った後、まだ震えるアシュリーをベッドに寝かす。
「アシュリー……まだ震えている……嫌な思いをいっぱいしたんだな……」
「ディル、ク……どこに、も……いか……な……で……」
「どこにも行かない……アシュリーの傍にいる……」
「ディル……こわ……い……」
「アシュリー……」
涙が止まらないアシュリーの恐怖の感情を取って行くと、少し安心したような、穏やかな顔になっていく。
腕輪が無くなったから、この能力がどう出るか気になったが、怖がるアシュリーをそのままに出来なくて、少しずつ様子を見ながら、いつものように恐怖の感情を取り除いた。
それは問題無く出来たが、俺の体調が悪くなることは無かった。
それから光魔法で身体中を浄化させていく。
しかしまだウーログの魔法が残っている状態だから、アシュリーは言葉も体も思い通りに出来ない様だ。
ノックがして、使用人がアシュリーの服と装備等を持ってきた。
アシュリーを怖がらせたくないので、その者を部屋には入れず、それを取りに行ってテーブルに置き、ベッドにいるアシュリーの元に戻ると、アシュリーが俺を掴んで離そうとしない。
「アシュリー?」
「ディルク……いや……行かな……で……」
「大丈夫だから……俺はどこにも行かないから……」
アシュリーを安心させる様に抱き締める……
「あの……ひと……は……?」
「……それは……」
「ディルク……じゃな…い…い、や……」
「アシュリー……」
「ディルクじゃ……なかった……ら……」
思わずアシュリーに口づけをした……
父上にあんな事をされて……怖い思いをしているアシュリーに……でも……アシュリーは俺を受け入れてくれたんだ……
アシュリーが俺を離さない
アシュリーは俺じゃないと嫌だと言った……
可愛くて 愛おしくて……
心が傷付いたばかりのアシュリーを目の前にして……
でも もう止められなかった……
全てを脱ぎさって
アシュリーと肌を合わせて
何度も口づけをして
アシュリーの全てに口づけをして
俺を抱き締めるアシュリーの中に
ゆっくりと入っていく
痛みに耐えるアシュリーに
優しく口づけをして
ゆっくりといたわるように
アシュリーと一つになっていく
アシュリーは俺にしがみつくように
俺を離さないように
涙を溢しながら
何度も俺の名前を呼んで
甘い吐息の中 小さく声が溢れ出て
アシュリーは俺の全てを受け入れてくれたんだ
ずっと一つになっていたくて
俺はアシュリーを抱き締めながら
何度も何度もアシュリーを求め続ける
それから暫くは
時が経つのを忘れて
ただお互いを求め合ったんだ……
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