第106話 連れ去られた赤子


「銀髪の部族じゃと?!」


「はい。」


「なぜお前がそれを知っている?!…いや、お前に隠し立ては出来ぬか……」


「なぜこの国は銀髪の女を狙っているのですか?」


聞いた途端、父から悲愴感が感じとれた。


「銀髪の女との間に出来た子は、優れた能力を持って生まれてくる。しかし、殆どが生まれる前に亡くなっているか、生まれてすぐに亡くなるか、だ。」


「銀髪の男はどうなんですか?」


「男でも試したのだ。しかし、母体が耐えられんでな。子を生む前に母体の方が亡くなってしまう。」


「しかし、それでは銀髪の女を狙っても意味はないのではないでしょうか?」


「一度、成功している。」


「え?」


「しかし、赤子を連れて逃げられてしまってな。」


「っ!」


「どうしたリディ?」


「いえ、何も……」


「それから探してはいるのだが、一向に見つからぬ。母親である銀髪の女も、その子供も。」


「そう……ですか……」


「もう良いか?疲れたので休ませよ。」


「ありがとうございます。継承の件は、また話しをさせて下さい。では……」


そう言って部屋を後にした。




何一つ話を纏める事が出来なかった自分に苛立ちを覚える。


しかし、弟を拐ったと言う銀髪の女は、母親だったのか……


でも、それでは話がおかしくはないか?


俺の弟であれば、俺もその銀髪の女が母親と言うことになる。


俺の母は、第10夫人のベアトリーチェだ。


そう聞いている。


それが本当なら、銀髪の女が拐ったのは、俺とは関係のない赤子と言うことになる。


しかし、リーザが嘘をつくとは思えない。


死の間際の言葉なのだ。


嘘を言う必要など何処にもない。




幼い頃を思い浮かべてみる。




姉は、最初から俺を嫌っていなかったか?


理由は分からなかった。


ただ姉からはいつも、嫉妬や嫌悪と言う感情が溢れていた。



これは姉に聞く必要があるな……







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