第84話 思わぬ危機


朝食が終わり、オルグの家に行くことを告げ、マリーの家を出る。


家を出て、少し歩いた所で、後ろから呼び止められる。


振り向くと、そこにはセルジがいた。



「どうした?」


「ちょっと話したい事がある。少しいいか?」


「あぁ、構わないが……」



それから2人で歩いて、牢屋近くにある建物の裏手にある茂みの方にやって来た。


ここに何かあるのか?


そう思っていると、セルジが真面目な顔をして歩み寄ってきた。



「アシュレイ……俺、あんたに惚れてしまったようなんだ!頼む、俺も旅について行かせてくれ!」


「えっ!セルジ!いきなり何をっ?!」


「なんだお前!アッシュは俺と2人で旅をしてるんだぞ!」


「俺、昨日からアシュレイの事が頭から離れないんだよ!頼むよ!これでお別れだなんて耐えられそうにないんだ!」


言いながらセルジは私の両肩を掴んで来た。


「セルジ!それは違う!私の瞳には魅了が付与されていて、セルジはそれにあてられてしまっただけなんだ!私を好きとかではないんだ!」


「そんな事はない!こんなに心を埋め尽くされたのは初めてなんだ!お願いだ!アシュレイっ!」


追い詰められる様に壁を背にした。


何とか離れてもらうように、セルジの胸に両手をあてて、力いっぱい向こうへ追いやる。


しかし、セルジはその手を掴んで胸から離す。


手首を掴んだまま、壁に押し当てられる。



「落ち着いて!セルジ!貴方にはマリーがいるだろう?!」


「マリーも好きだ。けど、アシュレイとは違うんだ。これが本当に人を好きになるって事だったんだ。それが分かったんだ!」


なんだ、このすごい力はっ!


「ちょっと待って!セルジっ!」


「嫌だ。」


言うなり、セルジが私に抱きついてきた。



初めて男の人にこんな風に抱き締められた。



昨日、マリーに抱きつかれた感じとは違う。



柔らかいと思うところがなくて、ゴツゴツした感じがする。



マリーの時は嫌な感じがしなかったのに!



なんでこんな、嫌な感じがするんだろう!?



「セルジ!離せっ!……離してっ!」


「嫌だ。」



言うなり、私の瞳をじっと見つめ出す。



ダメだ!これ以上魅了に侵させては!



そう思って下を向く。



するとセルジが私の顎を手で上げて、顔を無理に上げ、目線を合わせてくる。



目線を合わせないように反らす。




セルジの目線が私の唇に落ちる。




ゆっくりセルジの顔が近づいてきた。




「っ!やめっっ!!」




思わずギュッって目を閉じた。







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