第37話 氷の矢


細道抜け、元の行き止まりの場所まで戻って来た。


両手を広げ、集めていた魔素を分散させる。


細道が段々と狭くなり、やがて無くなっていった。




最後に一度、イルナミの街に戻ることにする。




せめてレクスとクオーツに最後の挨拶位はして出ていきたい。




こんなに未練を残したのは初めてだな。




程々の付き合いをしてないと、別れは本当に辛くなるんだろうな。




今回の事で分かったことは、今までの経験より多かった。




この街に来て、本当に良かった。




森を抜けて街に着く。


早速孤児院へ向かう。


孤児院に近づくにつれ、何か様子がおかしくなっていることに気づく。




どうしたんだろう?




気になって孤児院まで走っていく。




孤児院の前には、人だかりが出来ていた。


「おい!出てこいよ!」


「隠すんじゃないよ!」


「自分達だけズルいだろ!卑怯もんが!」


「教えてくれるだけで良いっつってんだろ!」


口々に言いながら、孤児院の扉を叩いたり、窓を抉じ開けようとしていた。


あの人だかりは近所に住むであろう農家の人達や、広場で見かけた露店商の人、他に冒険者らしき者もいた。




なんだ?!




何があったんだ?!




驚いて、少し離れたところで様子を伺っていると、そこにあの騎士達がやって来た。


「貴様ら、そこを離れろ!」


「どけ!どくんだ!」


怒鳴りながら、集まった人達を蹴散らす。


騎士達が来た事によって、集まった人達は一旦後ろに引いた。




騎士の一人が前に出る。




「我らはオルギアン帝国の騎士である!聞きたいことがある!責任者は出て来られよ!」



聞いた人達からどよめきが起こる。



オルギアン帝国はここから遠く離れた所にあるが、その国力、勢力は凄まじく、この国にはどこの国も迂闊な事ができない。


孤児院に篭っていたシスターが、おずおずと出てくる。


その後ろには、扉に隠れながらレクスや子供達が外の様子を恐る恐る見ている。




「はい……な、なんでしょうか……?」


シスターがビクビクしながら騎士達の前に出る。



「其方がシスター、カエラか。

調べによると、回復魔法で病気を治療されたとか。それは誠か。」


「い、いえ、そのような事は……」


「隠しだてすると厳重に罰をあたえるぞ!正直に申せ!」


「な、何の、事をい、言われてる、のか、わた、私には、その、さっぱり……」


「その言葉に偽りはないと申すか?!」


「もちろんで、ご、ござ、ます!」




シスターは騎士の迫力にビクビクしながらも、私が施した回復魔法の事を頑なに隠そうとしていた。



苛立った騎士が、



「本当の事を申せと言っておる!!」



そう言ってシスターの胸元を掴んで投げ棄てた。



それを見ていたレクスや子供達が一斉に扉から出てきて、シスターのそばに駆け寄った。



「知らないって言ってんだろ!」



シスターを庇いながら、レクスが騎士に刃向かう。

他の子達はシスターに抱きつき、泣いていた。



「なんだ貴様はぁー!!」



騎士は刃向かうレクスを足蹴りにした。


レクスは5m程吹っ飛んだ。




堪らず私が




「やめろ!!」


と雷魔法を放つ。




急に体を感電させられた騎士は、何も言わずに倒れこむ。




それを見た他の騎士達が、何がどうなってそうなったのかは分からないが、私が何かしたと言うことに結論を出し



「お前!我らに刃向かうかぁ!」


と言って剣を抜いた。


その騎士にも、雷魔法を放った。


そして急に倒れる。



今打ってる雷魔法は体の中を感電させているので、見た目はなぜかいきなり倒れ出すと言う現象になっている。

感電の力を弱めているので、これで死ぬことはない。



残りの騎士全員が私を敵と見直し、攻撃体制に入った。



他の騎士も雷魔法で倒そうとした時、騎士の一番後ろから、氷の矢が飛んできた。





それに気づいた時






私の目の前に、レクスが立ちはだかっていた






そしてレクスの胸を 氷の矢が貫いた






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