第33話 新たな目的
目が覚めると俺はまだ森にいた。依頼のため、ローンウルフを狩りに来た森だ。そしてプルーネと対峙した森でもある。
俺はプルーネを倒した後すぐに気絶してしまった。魔力が切れたせいだろう。そのせいでまだ身体が重い。
俺は重い身体を動かし、当たりを見渡す。
「魔物は……いないみたいだな。後ミオンは何処に」
気絶している間に魔物にでも襲われたら大変だからな。ミオンは……大丈夫だろう。
ちょっと適当すぎるかもしれない。が、あのミオンなら大丈夫だろう。俺もまだあの時の事をちゃんと理解しているわけでは無い。だが今すぐに理解する必要は無いだろう。時間はたっぷりあるのだから。
しばらくすると、茂みからひょっこりと大きな水袋を抱えたミオンが現れた。どうやら近くの河原で水を汲んでいたらしい。
俺たちはお互いにあの時起きた出来事について話し合った。話し合いの結果、「互いに分からないことだらけ」ということが分かった。
「にしてもミオンの回復魔法は凄かったな」
あの時、プルーネに負わされた傷。それをミオンの炎が瞬時に回復してくれた。正直今でも信じられない。魔法素人の俺でされわかる。あの回復速度は異常だと。まるで不死鳥にでもなったかのようだった。
そして謎の声が現れたのだ。俺を治してくれたあの声。あの声については考えても無駄なように感じている。そして、またいつか出逢えるような気もしている。
「私でもビックリしましたよ。なんというか『火事場の馬鹿力?』的なやつですよ。きっと」
「まぁ、そういうことにしておこう」
やはりミオンには自覚がない、という事になるの。
手がかりは『龍の琥珀』って言葉だけか。
「にしても不思議な体験でしたね」
「まさか魔王軍のやつと戦うとは思いもしなかった。それにちょっと気になる事も言ってたし」
「気になる事、ですか?」
「ああ。だがそれはまた後でだ。とりあえず今日は帰ろうか」
なんにせよ俺は疲れた。全身バッキバキだ。昔、ベイトさんの修行の時もこんな風になってたな。身体依然に心がバキバキになる。そして剣も折られて――けん!?
「忘れてた。そうだ剣だ!!」
俺は慌ててアイテムボックスのリストを見る。ちなみにアイテムボックスのリストは半透明で、そこにボックス内のアイテムのリストがずらりと並んでいる。
「あった!」
幸い、俺のアイテムボックスにはそこまで物が収納されていないのですぐに見つけることが出来た。
俺はアイテムボックスから
すると目の前には件が現れた。真っ黒な剣だ。どこか見覚えのある、美しい剣だ。その剣は正しく、俺の前世の愛刀。まさかこの世界でもう一度この剣を使えるとは思いもしなかった。
「クライシスのやつ、全く意気なことをしてくれる」
俺は剣を握り、感触を確かめる。
何度も、何度も。我が子のように。
「……しっくりくるな」
「にしても綺麗な漆黒ですね」
ミオンが興味津々と言った目でこの剣を眺めている。この世界では漆黒の剣は珍しいのだろうか。前世ではそうでもなかったが。
「リヒト様、この剣にはどんな『異能』が付いているんですか?」
「『異能』? ってなんだ?」
「えぇーっと、武器に付与された特別な力みたいな物です。良かったら『鑑定』してみてください」
俺はミオンに言われたとおり、この剣に鑑定スキルを使った。
魔剣 シリスロギア……詳細不明
異能……魔力を吸収し、魔力が加えられると魔力により剣が強化される。
「他詳細不明……でも異能がなんだかスゴすぎる」
この鑑定結果をミオン伝えると「なんか……ずるいです」と言われた。確かにこの能力は強すぎると思う。魔力を吸収、というだけでも強いのに魔力で剣が強化されるという。多分色々と制約があるはずだが、それを差し引いてもスゴすぎると思う。
「こればっかりは実験の繰り返しだな」
分からないことは分かるようになるまで試し続ける。強くなるためにはこれしかないだろう。人生はいつだって挑戦の繰り返しだ。
「そうですね。それよりリヒト様、これからどうなさるおつもりですか?」
「どうって?」
「今回の事件で、リヒト様は魔王軍に目をつけられたと思います。私的に言わせてもらうと、もう少し戦力を整えないといけないと思うです」
確かに魔王軍の1人を倒してしまったわけだし、当然目をつけられるよな。まぁ倒したくて倒したわけじゃないんだがな。
「売られた喧嘩は買うだけ。なら後は2つ、俺達が強くなる。そして仲間を集める、だな?」
「はい! その通りです!!」
ミオンに問いかけると、ミオンは大きく頷いた。やることは単純明快。ミオンは満足気な顔をしながら胸を張っている。あまり張っても胸はないが……。
となると色々とやることがある。
「まず街を変えるべきだな」
「街? ですか?」
「ああ。まずここいらの魔物は弱すぎる。駆け出しの俺らでも楽勝なくらいだ」
「まあそうですけど……ぁ」
どうやらミオンはようやく気づいたらしい。自分の強さと周りの弱さに。
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