第18話 終焉

本文

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 カイロは理解出来ていなかった。何故ライトがこんなに強いのか。10年前はただの雑魚だったライトが、どうしてここまで強くなれたのか。なんで自分よりも強いのか。過ごした時間は同じく10年。その間に何があった。何がアイツをあそこまで駆り立てた。


 カイロの頭は理解が追いついていない。だが目の前にいるこのライトが、自分よりも強者であること。それだけは理解出来ていた。――否、ライトによって理解させられたのだ。


 カイロは最初の一撃以降も、攻撃を何度も繰り返した。だがそれを全てライトに受け止められ、弾かれ、蹴飛ばされる。まったく敵わなかったのだ。



「これで分かっただろ。お前は俺より弱い」

「そ、そんな……バカな」

「恨むなら、あの日の自分を恨め!」


 あの日、10数年前カイロがライトの母親を殺した日のことだ。ライトには一生忘れられないであろう出来事。

 ライトはその日の事を思い浮かべながら、剣に力を込め、今までの思いを込め、今までの悪夢に終止符を打つ。



「『フォルテート流 鬼ノ型 鬼神 攻ノ舞』」


 ライトは幾度となくカイロに斬撃を与える。鋭く、素早く、丁寧に、死なないように、痛みを長く、苦しく味わえるように。何度も、何度も、力を込めて、恨みを、憎しみを、怒りを、全てを込めて。それはまるで、鬼神が舞踊っているかのように。



「ぐわっ、ゆゆるじで、ゆるじてぐれッ」



 カイロは必死の思いで命乞いをする。だがそんなものはライト耳には届かないカイロの顔は血と体液まみれになっておりかなり醜い。剣は折れ、金色の鎧はいくつもの凹みや傷跡が残っており、右腕に至っては曲がらないはずの方向に曲がっている。



「こんなんじゃ俺の怒りは収まらないぞ」

「なん、でだよ。俺ら……親友じゃ無がったのかよ」



 親友……確かに俺はまだ心のどこかで、カイロを親友だと思っているのかもしれない。カイロは俺の母さんの次に大事な存在だった。俺の憧れで、俺の兄弟で、俺の親友だった。だがカイロは俺の1番を奪った。奪ってはならないものを、決して犯してはならない罪を犯したのだ。



「ああ、確かにお前は親友だよ」

「じゃ、じゃあなん――」

「だが、親友だろうが何だろうが俺の大切なものを奪うものには容赦はしない」



 当然の事だろう。誰だって奪われるのは嫌なのだ。嫌ならば強くなるしかないのだ。そして俺は強くなった。復讐に捕われてるだの、好き勝手言えばいい。それが俺なのだから。それが俺の生き方なのだから。



「じゃあな、親友」



 俺は倒れているカイロの心臓を剣で突き刺す。カイロはそのうち死ぬだろう。カイロの体からは大量の血が溢れだしている。確実に死ぬだろう。



「母さん……これで良かったのかな?」



 復讐を遂げた俺に残ったのは虚無感だけだ。

 俺はこれからどうすれば良いのだろう。復讐は遂げた。やる事等何も無い。まあ最悪ベイトさんの所に行けばいいか。



「び、どでぃで」

「……ああ、もう眠れよ」



 どうやらカイロはまだ生きているようだ。

 意外としぶといなこいつ。

 俺はもう疲れたんだ。やり遂げたんだ。静かにしてくれよ。早く逝ってくれよ。



 俺がカイロにトドメを刺そうとするその時、カイロの左腕から黒い物体が現れたのだ。俺が何かと思った瞬間、その黒い物体は急激に光を放ち俺らを包み込む。



「びとりでいぐがぁーー!!」



 まさにカイロの最後の攻撃。黒い物体から放たれた光は2人を飲み込み、2人をこの世から消してしまったのだ。

 平原に2人の魔法使いと1人の死体を残し、2人はこの世から姿を消した。

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