第11話
「殿下、帝国軍中佐がお見えです。」
ウィザー城の私室の扉がノックされメイドが声をかける。今の私には逆らえる力も無く、帝国軍将校を通すしかない。
「お通ししなさい。」
「畏まりました。では、ヨハン様殿下がお会いになります。」
扉を開けて現れたのは帝国軍魔導猟兵士官の一種礼装。漆黒の軍服に騎士鉄十字章を首に附け胸部には多くの勲章が付けられている。
何故か自動拳銃を手渡し、無手で入ってくる。
「男爵位ヨハン・フォン・クロイス帝国軍魔導中佐であります。以後お見知りおきを。」
「連合王国王家、エリーザベス・アレクサンド・メアリ・サクス・コーバーグ・コーダ。」
恭しく一礼した中佐は目で向かいの席に座る許可を求めてきたので頷く。
「お会いできて光栄に存じます。」
メイドに紅茶の用意をさせる。帝国は珈琲党のようだが軽い嫌がらせのつもりで紅茶を選ぶ。
「ご要件は?」
紅茶が運ばれてきたところで1口。口を湿らせ、問いかける。
「本日は帝国・王国両政府より殿下の侍従武官に任じられた事の着任報告に参りました。殿下」
「結構です。私は王位に着くつもりはありません。」
「いえ、エリーザベス殿下、これは我々からの要請です。グレート・ブリティン連合王国は政府としての要件を満たせず我々の直接統治を行わざるを得ません。」
「軍政ね。脅迫のつもり?」
「いえ、殿下にも利益のある話です。こちら連合王国議会の議員が残した法制案なのですがご覧下さい。」
「ええ。」
帝国軍の上陸前、連合王国議会が可決した新継承法。連合王国国王が薨去若しくは国外への退去された場合。継承権を持つ王族が直ちに王位を継承する。
「このままでは貴女は継承権は放棄した事になるか、法律違反で拘束する権利を我々が得ることになりますが。」
帝国軍連合王国臨時軍政局命令1号
帝国政府からの命令に反しない範囲では連合王国の法が優先される。
「っ、私の侍従武官になると言いましたね。」
「ええ、小官は殿下にお仕えするつもりです。」
「仕方ありませんね。王位の継承は受け入れましょう。但し、1つ条件があります。」
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『と言う事情でして閣下。如何致しましょうか。』
私が最も信頼する部下ヨハン・フォン・クロイス中佐から初めての大きな問題が持ち込まれた。
「モドレーは何と言っている?」
『モドレー卿は殿下の即位がなるならばそれでも構わないが、規模は連隊程度に収めて欲しいと。』
モドレーから許可を取りつつ強力な部隊を持ち込み、モドレーらファシストを排除して貰いたいとの要請。
『小官の個人的な意見ですが、よろしいでしょうか?』
「構わん。何だ?」
『では、ルーデンドルフ閣下。小官はモドレーを切るべきです。帝国は民主政権を持ち、資本主義を採用しておりますが、この時点でファシスト共とは相容れません。ここはエリーザベス殿下を味方につけロンディウム市民の支持をこちらに付けるべきかと。』
彼の戦術眼、戦略眼は専門の参謀より優秀だ。
「……わかった。手筈はそちらに任す。クロイス中佐、貴官はどうするつもりだ?」
『皇帝陛下との面会は出来ますか?エリーザベス殿下を陛下と引き合わせたい。』
「何とかしよう。」
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