白雪姫と継母になり損ねた青年

どろんじょ

第一話

ある雪の深い日のことです。

荘厳と構える屋敷の奥で女の子の赤ちゃんが産まれました。


その少女は雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀のように艶やかな黒髪を持ち合わせていました。

その美しい容貌から白雪姫と名付けられました。

しかし、彼女を生んだ母親は彼女を生むとすぐに病に伏せそのまま帰らぬ人となりました。


そして母を亡くした幼い白雪姫の前に一人の少年が現れました。

彼は白雪姫の父の身の回りの世話をするために屋敷へと招かれたのです。



父はその少年に入れ込み、彼の言うがまま白雪姫を追いやりないがしろにしました。

彼は父と白雪姫の絆を崩壊させ、屋敷の実権を握るために屋敷に現れたのです。


憐れな白雪姫は父の愛情から遠ざけられ、屋敷の一切を取り仕切るようになった少年から疎まれました。

しかし、それでも彼女は年を重ねるごとに女性らしい柔らかさを備えた美しい少女へと成長していきました。


どのような罵倒をものともせず、白雪姫は少年に微笑みかけました。

少年はそれを無視しながらどこか胸騒ぎを覚えました。

そして自室にかけられた鏡を眺めました。

白雪姫の父を虜にした少年の美貌は、白雪姫の輝きから遠ざかり衰えて見えたのです。


そしてそれは彼が鏡を見るたびに、白雪姫の微笑みを向けられるたびに加速してるように思われたのです。

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