4杯目

「たしかになんでしょうね、これ。僕にも分からないんです。碧泉さん、えっ「パチパチパチパチ、パッチ、、、、パチ」と・・・。」


「あ、白柏シラカシです。「パチ、パチパチ」よろしくね!」


「人形か。邪悪な気を感じるな。「パチ、パッチ、パチ」」



人形を碧泉と白柏に手渡した。やはり悪いものだったらしい。



「んーまぁ、大丈夫じゃ「パチパチパチ」ないかな。」



雲雀殺が言う。張本人としては何とかして欲しくはないということだろう。だが、ここで死ぬわけにはいかない。



「パチパチってさっきからなんの音ですか?って何燃やしてるんです?雲雀殺さん!」



そこにはこんもりと集められた枯葉の山があった。・・・燃えている。


「焼きリンゴ、焼きマシュマロ、焼き芋・・・製作中。」


「「いつの間に!!!」」



白枝と白柏の声が美しい重なりを作った。所謂、ハモリというやつだ。気が合うかもしれない、と白枝は思った。


「さっき、紫苑に焼いといて欲しいっていわれた。マシュマロはその報酬。」


「美味しそうだね、俺も焼こうかな。雲雀《ヒバリ》ー。」


「どうぞ。とても美味しいです、コレ。」


「俺は鴉丸カラスマル。白枝君、よろしく。」


「あ、どうも」



マシュマロは意外に美味しかったし、皆と話せて楽しかった。その時だけは罪喰が白枝の命を狙っているということを忘れていた。

ついでにいうと紫苑の朝ごはんも美味しくて4回おかわりし、白枝は厠にこもっていた。





─────────────────




「ぐ、ぐはぁ。」


これは戦いである。孤高の白い戦場トイレでの・・・・・・。戦争が始まって3時間。只今の時刻は午後9時。戦況は白枝軍が不利である。

手すりに捕まり、トイレまで。月の光でかなり明るかったので足元がみえ、楽に戦場まで来れた。今宵は気温が低くて過ごしやすく、さらに満月になると、紫苑が言っていた。

食べすぎて腹を壊し、治ったと思ってるまた食べ壊し、今に至る。予測できていても止められなかっただろう。仕方ない。紫苑のご飯はそれほど美味しかった。あれは悪魔の食べ物だ。


「う、うおおおおお・・・・・・・・・・・・」


勝利の光が見えてきた!これで勝ちだ!





────────────

そして1時間。白枝は無事勝利した。多くのトイレットペーパーが犠牲になったが、白枝は無事だ。今まさにスッキリとした顔で厠の戸を開けて出んとしていた。ちょっと暗くて、不気味だ。



(やっぱり、日本家屋って地味に怖いとこあるよな・・・。)

「ヴッ。」



白枝は足を曲がり角にぶつけてしまった。痛くて壁に寄っかかって悶えている。さっきの戦争とは違う痛みが彼を襲っていた。足元は暗くて見えづらく、動きにくい。壁のシミが何故か人の顔に見えてしまって横を向けない。古びた床がギシギシ・・・となる。日本の夏特有の湿気のある生暖かい風が白枝の頬を撫でた。これが毎年嫌で大人になったらヨーロッパの方へ行きたいと思った時期もあった。

厠から白枝の部屋へは厨房の前の廊下を通らねばならないが、電気が消えていた。さっきまで紫苑と罪喰が明日の朝ごはんの仕込みをしていた筈だったが、白枝が長く篭っていたのだろう。2人はもう居ない。

厨房を通りこすと、前の長い廊下に人影が見えた気がした。



(どうしよう。すごく怖い。)



廊下は長く続いているし、月が雲に隠れて光がないので暗くて全く見えない。人がいるようないないような感じだ。いると思えば、いるように感じる。



「・・・進みたくないな。」



白枝はお化けとかの類は苦手だ。歌を歌っても怖さは絶対に拭えたことはなかった。



「海斗くん!!」



今朝聞いた声だ。──白柏。そう、白柏の声だ。急に緊張と不安がなくなる。明るい彼が来たからだろうか。白髪がホサホサと動くのがみえる。嗚呼、白柏が此方に向かって走ってくる。と、思うと目の前で転けた。



「白柏くん!大丈夫?」


「全然大丈夫だよ。いやー、それにしても海斗くんがいて良かった。急に電気が消えたから。」


「急に?」



停電でもしたのだろうか?急に電気が消えるなんて心臓に悪すぎる。例え、自分の部屋にいても急に電気が消えたら、誰でも慌ててしまう・・・だろう。そうに違いない。



「ここは一応仮住まいみたいなものだから、上手く電気が来なかったのかも。もしくは電配が切れちゃったかな。」


「電配?」


「姉さん達が考案してつくったんだ。それで屋敷の電気を全て通しているんだよ。」



凄いな、姉さん達とやら。どうやら、電気の仕組みまで白枝のいた世界とは違うようだ。美少女がいないことは気になるが。



「あ、あの部屋空いてる。」


そこは雲雀殺の部屋だった。空いているなんて珍しい。白枝がここに来てから1回も襖が空いていることはなかった。これはチャンスかもしれない。彼女が次にどう白枝を殺そうとしているかを知るチャンスだ。そっと中を覗いて見ると・・・何が沢山あるのがみえる。やっと目が慣れてそれが何が分かることが出来た。否、分からなくて良かったかもしれない。



「ウア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」


「どうしたの、海斗くんってなにこれ!!気持ち悪っぅぅぅぅ。姉さん趣味悪っぅぅぅぅ!!!」


「え、え、し、白柏くんの姉さんって雲雀殺さん!?」



男2人の叫び声が夜の暗い空に響いた。傍から見ればかなーり危ない2人だ。しかもそこに・・・


「どうしたッ!!!!!」


「「うぎゃぁぁぁぁあああああ!?!?」」


「うぉぉおおおおお!?!?」


碧泉まで大きな声で来るものだから3人の悲鳴の大合唱となった。五月蝿い。



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