STAND BY ME(11)

 エルフさんの密かな欲求というか俗っぽさも感じつつ、そっぽを向く彼女ののようなものを感じてホッとする。


「ところで、さっきの試験管は一体なんだったんですか?もしかして危ないことに––––––」


「違う違うっ!あれは本家の人だよ。エルフの血は秘薬の材料になるから定期的に採血して渡す決まりになってるの」


 僕の言葉を聞くより前に答えてくれた。てっきり、お金に変えてるのかと邪推してしまった。


「そうだったんですか。良かったです。変なことに巻き込まれたりしてるんじゃないかと。あの人、めちゃくちゃ怖かったですし」


「あははっ確かにね。でも今日は凄い警戒してた。外套に認識阻害の魔法まで組み込んでたし」


 さっきとは打って変わって和やかなムード。そういえば笑った顔は初めて見た気がする。見てるこっちまで笑顔になってしまう。


 嬉しいな、彼女が笑ってくれるのは。


「そういえば、エルフさん敬語じゃないんですね。あっ!敬語で喋ってほしいとかそんなんじゃないですよ?」


 失礼なことを言ってしまったかと慌てて訂正するが、「気にしないで」と微笑んでくれる。


「いいの、もう。だってあれだけ突き放したのに君、全然言うこと聞いてくれないんだもん。そんな後輩に敬語なんて必要ないでしょ?」


 そう言ってイタズラっぽく笑う彼女は本当に綺麗で、テレビで見てたときよりよっぽど魅力的に僕の目に映った。


 なんだか可愛いすぎて、照れる。


「あはは、面目ないです......」


 エルフさんの最もな意見に返す言葉もなく、苦笑いで答える。


 それから随分と長い間、僕とエルフさんはファミレスで話し続けた。


 他愛もない話しやエルフさんがこれまで見た外国の話し。僕の質問には快く答えてくれたし、嬉しかったのはエルフさんも僕に質問してくれたというところだ。


 僕を知ろうと歩み寄ってくれてることがわかって感動すら覚える。


「そういえば気になったんですけど、エルフさんて何歳なんですか?」


「......」


 ピキリ、と氷つく空気。


「君、もしかしてエルフにだったら年齢聞いても怒られないとか思ってない?」


 ......思ってました。ここで思ってません。なんて言っても意味ないんだろうなあ。


「思ってましたぁああああっ。すいませんっ」


「ふふっ素直でよろしい。でも、もう嘘ついても大丈夫だよ」


 エルフさんは優しげな笑みを浮かべている。


「え、結局バレちゃうじゃないですか」


「実はさっきから精霊の声が聞こえないの。嫌われちゃったわけじゃないと思うんだけどね」


「え?!それって大丈夫なんですか?」


「ん。大丈夫だよ。それに君がつく嘘なんて、どうせしょうもないことだろうしね。問題ないよ」


 開いた口が塞がらない。その判断のされ方は引っかかるんだけども!


 けれどまさか彼女とこんな風に会話が出来るとは思っていなかった。


 もし、諦めていたら彼女のこんなイタズラめいたセリフも笑顔も見ることは出来なかったのだ。


 今も目の前で笑ってくれる彼女がとても尊いものに思えてしょうがなかった。

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