だから私は冗談が好きなんだ。

詩でもなんでもない私の癖の話をしよう。


私は、人を慮った後、度々その人を失ってしまう妄想をしてしまうのだ。

その時の慮りで言った「大丈夫?」や「ありがとう」の言葉が、その人と交わす最後の言葉になったらどうしようと。

例えば交通事故で、例えば過労死で、例えば通り魔に襲われたり、例えば病気に見舞われたり。

私の交わした''その言葉''を、その人との最後の記憶になってしまうんじゃないかと、ハッと脳裏に浮かんでしまう。


だから特に近しい人間には、気軽に「大丈夫?」なんて言わないようにしている。


それでもその言葉を口にしたいときは、度々その言葉を口にして相手の生存確認を済ませて、安心しようとする。

そうでなければ、ただただ理由もなく不安なのだ。

もし終わっていたら、きっと私は何かを失ってしまう気がするのだから。


けれど私という生命体は我が儘で、慮ったらその慮りに応えてほしいとも同時に考えてもしまう。

同じように慮れとは言わない、そんなことはいはしないが、けれど返ってくるものがなにもなければ、それを悲しくも感じてしまうのだ。


そんな私の心に、私の薄い自尊心から形を成した『見返りを求めるな』という言葉が聞こえてくるが、けれど、それにしたって空しいじゃないか。

なにもないまま私だけ吠えているのは、まるでただの私の一人相撲みたいじゃないか。滑稽じゃないか。


だからこそ、真剣な話なんて私は基本しない。

だからこそ、自分のことなんて私は人には言いはしない。

だからこそ、「大丈夫?」なんて、言うにしたって本人に直接しか言いはしない。

だからこそ、その言葉を言うことに疲れてもいた。


寂しがりの心配性の私が、疲れもせず、空しくもならずに人と会話をするためには──。


だから、私は冗談が好きなんだ。






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