昼休みの衝撃

 昼休みの教室、ルークスの隣でアルティがいらついていた。

 学園には寮があり、寮生は昼食を寮の食堂でとる。

 一方アルティらフェルームの町に自宅がある者は教室で弁当だ。

 そんな弁当組の少女三人が向かいで一緒に食事をしていた。

 アルティの記憶では、初等部以来の出来事である。

 今までゴーレムオタクと蔑んでいた三人が「ルークス卿」と甘い声で呼んだときは「何ごとか」と彼女は驚いた。

 一緒に昼食をとりたいとの申し出を、ルークスが断るとばかりアルティは思った。

 だので「アルティが良いなら」と言われたときは、別の意味で驚かされた。

 ルークスが他人を気遣うなど珍しいを通り越して、過去にあったろうかのレベルである。

 それに判断を求められても困る。

 断れるはずがないではないか。

 断ったら、アルティが意地悪をしたことになってしまう。

 それが分からない鈍感さは相変わらずだった。


「ルークス卿、陛下はどんな方ですか?」

「とても責任感が強い人」

「さぞお美しい方なのでしょうね」

「そうらしいね」

「貴婦人の方々はいかがでした?」

「さあ。見ていないし」

「え? 舞踏会は開かれなかったのですか?」

「そんな話は聞いていないよ」

 三人の少女たちは猫なで声でルークスにばかり話しかける。

 今まで憧れの存在だったフォルティスが隣にいるのだが、もう眼中にないらしい。

 三人は肉食獣の目でルークスを捉え、あわよくば食いつこうと舌なめずり。

 ルークスがただの騎士ではなく、英雄となったからであるのは想像に難くない。

 この変わり身は同性のアルティでさえ退いてしまうほど露骨だった。

 牽制のため、彼女は敢えてフォルティスに話しかける。

「ちょっと相談があるんだけど」

「なんでしょう?」

 ルークスを挟んで二人は会話を始めた。

「妹のパッセルが屋敷のメイドになりたがっているの。どうしたら諦めさせられるかな?」

「妹さんがルークス卿の屋敷で働きたがっている、と? さて、どうしましょう」

 フォルティスはアルティの意を汲んだらしく、補足をしてくれた。

 ルークスはフェクス家を出ることになっている。

 騎士に相応しい屋敷を王宮が提供することとなっており、放課後に候補物件を見に行く予定だ。

 自分の名前が出れば、さしものルークスも気が付く。

 そこまではアルティの読みどおりだったが、会話に参加した途端とんでもない事を言い出した。

「良いんじゃないか。パッセルなら、一番身元がしっかりしているし」

「よしてよ。パッセルはあんたの妹なんだから。家族を使用人にするってどうよ?」

「そういう事になるのかー。うーん、おじさんの工房で僕が働くのとどう違うの?」

「お屋敷勤めって家の手伝いと同列なの?」

「それは良くある話です」

 とフォルティスが主人を立ててきた。

「兄も父の従者をしていました。騎士は従者を数名置きますが、身内がいるのは珍しくありません。臣下との信頼関係も重要ですが、身内の結束はいざという時に頼りになりますから」

「何よ、従者殿は賛成なの?」

「悩ましい所です。他の使用人がパッセル嬢に嫉妬するのは確実ですので」

「嫉妬?」

 ルークスが怪訝な顔をする。

「あんたには無縁の感情よ」

「そうだね。誰かをねたんだなんて一度もないし」

「それは驚きました。失礼ながら、それほどの人格者とは思っていませんでした」

 感心するフォルティスにルークスは尋ねる。

「人格者って何?」

「他人の幸福を妬むことなく祝福できる、器の大きな人間のことです」

「それが分からない。他人が幸せなだけで、どうして嫌な気持ちになるの? その人が自分の財産を巻き上げたとかならともかく、無関係なんでしょ? その人が幸せなだけで、無関係な僕が祝福するのも変な話だよね」

 一瞬言葉に詰まったフォルティスだが、素早く頭を巡らせる。

「確かに。無関係なら、そこに感情は生まれませんね。しかし、多くの人間はなんらかの関係はあります。そして『もし自分があの立場になれたら』と考えてしまいがちです。何故自分には他人のような才能や幸運がないのか、と悩んでしまうこともあるでしょう」

「それなら僕は死ぬほど悩んだよ。ノームに好かれる才能がなくて。でもアルティやフォルティスがノームを召喚できても嫉妬なんて感じたこともない。それって無関係だからじゃないでしょ?」

「確かに、そうですね」

「ルークス、あんたは他人と違いすぎるの。嫉妬はある程度近くないと湧かないわ」

「そうなの?」

 とルークスはフォルティスに確認する。

「そうですね。平民は裕福な平民には嫉妬しても、王族には嫉妬しないと聞きます。恐らく、自分がその立場になったときのことが想像できないからでしょう」

「もし自分が他人の立場なら、か」

 ルークスは考える。答えはすぐに出た。

「僕は両親の子で良かったし、フェクス家に引き取られて良かったって思っている。誰かと交代したところで、今以上にはならないから、誰かの立場になりたいなんて思わないよ」

「それは――無欲ですね」

「僕が無欲? そりゃ違うよ。僕はずっと『ゴーレムマスターになりたい』という欲で動いてきたから」

「失礼ながら、それは一般的に欲とは呼びません。むしろ誠実さの表れです」

 フォルティスのフォローが、三人の邪魔者を呼び戻すので、アルティは話題を戻させた。

「それで、パッセルはどうすんの?」

「嫉妬されると分かっていてもやりたいなら、良いんじゃないか」

 ルークスは安請け合いした。

「それにはルークス卿、あなたがパッセル嬢を特別扱いしないことが必須です」

 フォルティスの忠告にルークスは渋い顔をした。

「難しいな。全然知らない人を家族同様にするなんて」

「反対です。家族を他人と同じに扱うのです」

「そりゃ無理だ」

「だったら止めるべきかと」

「どうして?」

「ですから、パッセル嬢が嫉妬されますので」

「僕がパッセルを他人扱いしたら、嫉妬されなくなる?」

「それは――ないでしょう」

「なら一緒じゃないか」

「度合いが違います。主人が態度で示すことが必要なのです」

「僕が態度を変えることで何か変るの?」

「嫉妬する者の心の中が変ります。主人に特別扱いされると、嫉妬による悪意を正義感に置き換えて正当化してしまいます。そうした正当化を防ぐには、他人扱いするのが最善なのです。そうすれば『主人は平等に扱っているのだから、彼女を良く思わない自分の方が間違っている』と分かるのです」

「たちが悪いね。嫉妬するとそんなことするんだ」

「嫉妬に限らず、人間は自分の中の悪感情は認めないものです。正当化できる口実があれば、それに飛びついてしまいがちです。しかも無意識のうちに」

「へえ、複雑なのか単純なのか、分かんないね」

「ルークス、あんたはまだ幼いのよ。多分、心が五才のままなんだわ。成長するにつれ、そういう悪い部分もできていくから」

「アルティにも悪い分があるの?」

 問われてアルティの胸がずきりと痛んだ。

 今、その悪い部分に突き動かされている最中ではないか。

 それを無邪気に尋ねられ、アルティは自己嫌悪に陥った。

「ルークス卿、それは面と向かって言うことではありません」

「でも聞かなきゃ、あるかどうか分からないじゃないか」

「ああ――それが分からないのは、ルークス卿に悪感情を正当化した経験がないからなのでしょう。ええ、ルークス卿は正直なんです。精霊が望みうる最高の、裏表が無い人間です。

 しかし、あなたは例外なのです。そうした悪感情は誰にでもあります。世界中のどの人間にもありますし、私にだってあります」

「赤ん坊にも?」

「それは――ありません。幼児期には芽生えるものですから、アルティが言ったように、ルークス卿の精神年齢はまだ五才なのでしょう。ですので、それを聞くのは残酷な行為なのです」

「ふうん。なら、もう聞かない」

 ルークスが退いてくれたので、アルティも息がつけた。

 ちらりと横を見ると、ルークスに接近していた女子三人が思い切り退いていた。

 彼の変人ぶりを今さらながら思い知ったらしい。

 当初予定とはかなり違ったが、牽制は十分にできた。

 そう思う事で、アルティは自己嫌悪という代償を払った自分を納得させた。


                  א


 その頃、平民女子寮の食堂ではデルディが大荒れしていた。

「寄生虫の貴族どもめ!!」

 他の編入生は巻き添えを恐れて離れ、彼女の正面や左右の席は空いたままだ。

 中等部五年の班長ベニーが注意するも、痩身の編入生は聞く耳を持たない。

 高等部の生徒から苦情が来るなど、食堂内は険悪な空気となった。

「ここは風精使い繋がりで、ルークスに一番近いヒーラリが説得してはどうでしょう?」

 と長身のクラーエが肘で隣をつつく。

「そこは編入生と同じ土精使い繋がりのクラーエじゃないっすか?」

 眼鏡をしたお下げの少女が突き返す。

「なら私がやってやろう!」

 と立ち上がった小柄な少女の脳天に、クラーエがチョップを落とした。

 ヒーラリはげんなりしてため息をつき、うなずく。

 カルミナの尻拭いをするくらいなら、最初から自分がやった方がマシである。


 デルディは肩を叩いてきた相手を睨みつけた。

「やあやあ、私はヒーラリ・ルーモル。同じクラスっすよ」

「何か用?」

「ルークスについてちょいと説明が必要と思ったんすよ」

「お前は奴の取り巻きか?」

「そういうんじゃないんすよ。ただルークスが普通じゃないってことを教えたいっす。何しろ彼は、人間より精霊に近いっすから」

「何をバカな」

 吐き捨てるように言うデルディの隣にヒーラリは腰掛けた。

「後ろのテーブル列、初等部なんすけど、何人か肩に小さな精霊を乗せているっすよね?」

 デルディは振り返って、それを確認した。

「何だあれは?」

「土の下位精霊オムっす。まだノームと契約できない子たちっすね。でもオムは友達になってくれたみたいっす」

「オムみたいな役立ずを連れて何の意味がある?」

「その『意味』を無視したのがルークスなんすよ」

 デルディは理解できず眉をしかめた。

「ルークスは『友達だから』精霊といるんすよ。精霊の力を使おうなんて、ほとんど考えてこなかったっす」

「バカな。精霊使いは精霊の力を使うのが仕事だろうが」

「そこがルークスの変人たる所以ゆえんっすよ。聞いてのとおり彼はゴーレムマスターになりたかった。だから彼が力を使いたい精霊ははノームだけなんす。けれど風精との相性が良すぎるせいで、反対の属性の土精からは嫌われているんす。なんとか友達となったオムに願いを託すばかりで、せっかくのグラン・シルフの力を使ってこなかったんすよ」

「もったいない。それじゃ契約した意味がない」

「そこはそれ、ルークスは『友達になった』だけっすから。彼からすれば『友達になるのに理由がいるの?』っすよ。むしろ『力目当てに友達になろうなんて』って白い目で見られたほどっす」

「それはおかしい」

「そう思っていたんすよ、学園のほぼ全員が。だって『精霊は使役するものだ』と教える学園で、ルークスが一人だけ『精霊と友達になる』と言っていたんすから。全員と違うことを、たった一人で主張していたんすよ」

 デルディは、はっとした。


 それは自分の状況と同じではないか。


「ある日事件が起こったっす。精霊の力を制限しようとした神学教師がいまして、それに従った生徒たちが全員精霊たちに契約を解消されたんす。さらにそんなことをさせた学園に愛想を尽かせて、精霊が学園から出て行ったんすよ」

「大事件だな、おい」

「その神学教師に真っ向対立したのが、ルークスなんすよ。結局、その教師は学園から追放され、ルークスは『友達の力を借りて』学園に精霊を呼び戻したっす。だもんで王宮精霊士室――この学園の上の組織っす――が『精霊と友達になる』を契約の一形態として認めたんす。つまりルークスは、学園が否定してきた『自分の正しさ』を行動で証明したんすよ」

「そうか。それで我々に『同じ事をしろ』と言ったのか。だがそれは騎士だから可能なことだろ?」

「その事件は新型ゴーレムを作る前っす。つまりルークスが平民だったときのことっすよ。だって騎士になったのは数日前っすから」

 デルディは納得できなかった。

 貴族が平民に評価されていることに。

 自分には出来なかったことをやられたのが悔しかったのだが、それは自覚できずに「不正だ」と思い込むことで自分の不満を正当化しにかかった。

「本当に正しかったと、誰が証明した?」

「は? 大精霊と契約するのが精霊使いの目標っすよね? 十歳で達成できたんすから、正しいとしか言いようがないっすよ」

「十歳!? そんな小さなうちに、どうしてそんなに確信が? 不自然だ! いきなりそんな、正解を見つけられるわけがない!!」

「まあ『精霊と友達になる』ってのは、父親から教わったそうっすけどね」

「父親も精霊使いなのか?」

「ええ。ドゥークス・レークタ。九年前の戦争の英雄っす」

 その名は知っている。

 デルディが小さな頃、戦争に勝ったと大人たちが口にしていた英雄の名前だ。

「彼は、ドゥークスの息子か?」

「そうっすよ。ああ、編入生は知らなかったんすね」

「なんだ、じゃあ凄いのは父親だ。彼は言われたことをやっただけじゃないか」

「まあ、そうなんすけど、私ら誰もその事を知らなかったんすよ。つまり、ドゥークスは他では『精霊と友達になる』って言わなかったってことっすよね。真っ先に部下に教えそうなことじゃないっすか。

 でも考えてみれば分かることっす。彼はルークスが五才の時に死んでいるんすよ」

「だから何?」

「幼児向けに契約のことを分かりやすく説明した、と私は思うんすよね」

「ちょっと待て。五才でまさか精霊と契約していたのか?」

「ええ。初等部入学のときに、一人だけ友達のシルフ連れていたっすよ。私がルークスを知ったのはそのときっすね。学園で習うことを、もうやってのけた奴がいるって。

 で、中等部に上がるときはグラン・シルフっすよ。それに加えてウンディーネにサラマンダー、学園の木々に宿るドリュアスは全員がルークスの友達なんすね」

「な!? それじゃ何十体も!?」

「シルフだけで百行くんじゃないっすかね」

「あり得ない!!」

「疑うんなら精霊に聞けばいいっすよ。人間と違って嘘はつかないっすからね。ルークスはいつも『精霊のことは精霊が教えてくれる』って言ってるんすよ。それが根拠で学園の教えを否定していたんすから」

 デルディには信じられない話である。無意識のうちに信じたくないと拒絶しているのだが。

「そんなに多くの精霊と、しかも役に立たない精霊と契約して、何が目的?」

「だから、ルークスは友達と遊んでいるだけっすから」

「契約精霊とは違うのか?」

「精霊からしたら友達・・契約・・の上位概念だそうっす。契約はその範囲内のことしかしないっすけど、友達のためならそれ以上に頑張るんすよ。

 さらに言えば、ルークスの側にいる四人は友達のさらに上の親友・・っす。


 何しろ魂を持っているっすからね」


 デルディは驚きのあまり声を失った。

 精霊が魂を宿すのは、人間に恋をしたときである。

「四体も? それで、精霊の間でトラブルにならないのか?」

 三角関係どころの騒ぎではない。

「はあ、どうも精霊からしたら恋愛感情とは別だそうすよ。だから親友なんすね。

 ともかくそのお陰でオムも限界以上のことができて、小さいながらゴーレムを動かせたんす。新型ゴーレムも精霊たちの献身で実現したっす。

 ルークスは精霊に魂を与えることで、限界以上の力を出してもらえるんす。でもそれは『精霊の力を利用しようとしなかったから』なんすよねえ。いやあ、無欲の勝利っすね」

 あの騎士が精霊使いとして破格どころか「歴史に名を刻むほど凄い」のだとは、デルディは認めたくなかった。

「ドゥークスもそのくらいできたのだろう?」

「私が知る限り、ドゥークスの契約精霊は六体っす。グラン・ノームを合わせて。魂を与えたって話も聞いたことないっすね。

 だから精霊使いとして、ルークスは父親を遥かに上回っているんすよ」

「そんな……」

「確かにきっかけは父親っすけど、両親の死後、学園に否定されても続けたのはルークスの意思っす。だからルークスの功績と考えるべきなんじゃないすか?」

 どれだけ抵抗しても、デルディはヒーラリの論旨を覆せなかった。

 事実の積み重ねに思い込みが跳ね返されたのだが、それを「口のうまさで負けた」と捉え、デルディの悔しさが倍増した。

「それを、我々にやれと?」

「あんたはあんたの正しいと思ったことをすれば良いんすよ。ただし、他人に強制してはダメっす。ルークスは一度も『精霊と友達になれ』とは言わなかったっす。ただ友達を増やしていっただけで。そうして実績を積み上げていくうちに、大精霊まで親友になったっす。それを見た――」

 とヒーラリは隣のテーブル席を示す。

「――後輩たちが真似を始めたわけっす。他ならぬ私も、精霊と友達になろうとしているんすよ」

 騎士が平民の生徒たちに影響力を持っていることに、デルディは危機感を抱いた。

「それで、精霊と友達になってどうするのだ?」

「なんすか?」

「もちろん貴族と戦うのだろうな?」

「戦う? 戦うなら私らには、貴族よりも先に戦う相手がいるじゃないっすか」

「そんなのはいない! 平民の敵は貴族。これは天下の大法則だ!」

 ヒーラリは眼鏡を直して相手の顔をまじまじと見つめた。

「マジでそんな事を言っているんすか? 平民貴族関係なく、サントル帝国は敵じゃないっすか」

「それは、特権を奪われたくない貴族たちがそう吹聴しているだけだ!」

 嫌な予感にヒーラリの背筋を冷たいものが伝った。

「あの、ならなんで身分制がない、共和制の都市国家とかも対帝国包囲同盟に入っているんすか? ていうか、帝国に侵略された国に共和制の国もあったっすよね?」

「都市を牛耳る富裕層が敵対を煽っているんだ!」

「どうしてそこで『そういう小悪党より、帝国という大悪党の方が問題だ』とは考えないんすか?」

「帝国には身分制がない。富裕層が貧困層を搾取もしない。人々は苦しまずに暮らせる、まさに理想社会じゃないか」

「それは外向けの建前っすよ。帝国にも貴族に該当する市民階級があって、平民である大衆を支配しているじゃないっすか。貧富の差も、貴族と平民の比じゃないって聞くっすよ」

「市民は指導者で、民を教え導いているだけだ。支配しているわけじゃない!」

 ヒーラリは言葉をなくした。

 予感は的中してしまった。

 説得するはずが、とんでもない大鉱脈を掘り当ててしまった。

 しかも役立つ鉄鉱石や石炭ではなく、毒物の。


「そいつ、革新主義者です」


 と、編入組の後輩がデルディを指さした。

「リスティアの訓練所で、教官の中にそんなことを言う奴がいました。そいつに教化されたんです」

「革新主義者ですって!?」

 一人が大声あげたのをきっかけに、寮の食堂は大騒ぎになった。

 帝国の間諜も同然な人間が入り込んでいたのだ。

 ヒーラリも逃げだし、距離を置いて取り巻く周囲をデルディは睨みつける。

「お前たちは全員、貴族に騙されているんだ! それに気付かない愚か者め!」

 食堂に捨て台詞が響いた。

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