残暑✕スポーツ少女

『少し距離を置こう』


 ―― あれから彼は何も言って来ない。


「暑い…」


 部活帰りの商店街。スティック状のアイスをくわえながら歩いている上着のみジャージを着た女子高生は憂鬱そうだ。現在9月25日。

 猛暑が8月末までってテレビの気象予報士が言っていたが外れた。暑いのは部活終わりだからではない。外気温が夜だというのに高いのだ。


「ガリガリ…またシャワーしなきゃ…」


 色黒な少女は、背中に手を回す。部室のシャワー室で汗を流したばかりなのに、背中がべとべとで気持ち悪い。


 しかし独りで居ると悶々と考えて嫉妬ループに迷い混んでしまう。


 別に別れの言葉を投げ掛けられた訳でもない。ただ避けられている。ラインをしても出ない。腹が立つ。学校ですれ違っても無視。腹が立つ。家に行っても出ない。腹が立つ。中学時代の同級生の小さな子とは屋上で仲良くしているようだが。まさか…ボーイズラブではない…よね。男子が仲良くしているだけでそう考えるとは我ながら短絡的だ。ラノベの読みすぎなのだろう。 


 でも二人が帰るのを尾行した時。腕を組んでたよな…あれは何なの?私だって腕組んで歩いた事ないのに…。仲がいいからってくっつき過ぎだ。だいたい私が何をしたと言うのだ。毎夜中電話で2時間くらい話たり。休日は10回くらいラインをしているだけ。全然足りないくらいのコミュニケーションじゃない。リョウタは面倒くさそうにしていたがアイツは分かっていない。


 今の世の中コミュニケーションは多く取らねばならない。職場のパワハラなんてほぼそれが不足している事に起因している。空気を読んで行動しろとか、上下関係とか、怒鳴って奮起させるのはいつの昭和のモーレツ社員だよ!24時間闘えって…どんだけ酷いブラック企業だよっ!全く!○ゲイン飲んでジャパニーズを叫ぶ時代は終焉したんだ。お父さんも職場では、部下に飴玉配りながらご苦労様って言って回っているって聞いたもの。


 このスタイルを変えるつもりは毛頭ない。


 アイスを食べ終わり。


「!」


 あれはなんだ…手を繋いで!ラブラブなリア充は爆発しろとかは言わない…風紀を乱す行為、逮捕しちゃうぞ!バンバン!


 目の前を歩いているカップルに、手でピストルを撃つポーズを取る。


(ん?誰だ?見知った顔のカップル女の子は超美形だモデルさん?…あのちっこいのは…)


 リョウタの友達のコウキくん!?


 …彼氏の友人…現状を打開するには…やはり彼に協力してもらうしかない。


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